診療報酬改定から発展した精神保健指定医VS非指定医論争

こんにちは、たつみです。
今回は前回の続きで、診療報酬改定から始まった「指定医 vs 非指定医」論争についてです。
精神保健指定医と毎回書くと長いので、今回の記事では指定医と書いていきます。

正確には対立構造というわけではないのですが、SNSの雰囲気としてはほぼこのような構図になってたので、もうこの流れのままで話を進めようかなと思います。

今回の記事は前回以上に僕の個人的な意見です。
あくまで一意見として捉えてください。

目次

改定内容のおさらい

前回の記事でも書きましたが、今回の議論の中心にあるのは
非指定医の通院精神療法が40%カットされた
という点です。

今回の診療報酬改定の主目的は、明らかに精神科医としての経験が乏しいにもかかわらず、精神科医として勤務している現状に対してメスを入れることだと考えられています。

これは、

精神科医としてのある程度の実力が担保されているかどうか

その一つの目安として、指定医という国の資格の有無で線引きをした、ということです。

あえて嫌な言い方をするのであれば、

指定医を持っていない場合、精神科医としての実力が乏しい可能性がある
→ であれば報酬は40%カットが妥当ではないか

というロジックなのではないかと思います。

これに対して、各所からさまざまな反論が出ています。

  • 指定医を持っていなくても優秀な先生はいる
  • 事情があって取れなかった人もいる
  • キャリアとして必要と感じていなかった。今さら取るのは難しい

といった意見が多く見られました。

こうした意見がさらに議論を呼び、その結果「指定医 vs 非指定医」という構図になりました。

完全に2分された対立構造ではない

この対立は、「指定医vs非指定医」というわけではありません。

精神科クリニックの院長先生からも非指定医を擁護する意見が一部ありました。

精神科クリニックでは、非指定医を雇用しているケースも多いため、
非指定医だからという理由で報酬がカットされるのは不当だ
という主張になるのは、ある意味当然とも言えます。

純粋に収益が落ちますからね。

また、今回の改定によって、

  • このクリニック、指定医が少ないけど大丈夫かな?
  • 自分の主治医は指定医じゃないけど問題ないのか?

といった患者さんの不安を招くことやクリニックの評判が落ちることを懸念して、
発言された方もいるでしょう。

先に僕の意見というか立場を表明しますが、

「もう少し報酬カットの条件の緩和は必要と思うが、今回の改定自体には概ね賛成。
今のメンタルクリニック界隈の実情を知るとやむを得ないよね」

という立場です。

あと、非指定医を擁護する意見と、指定医を取らなかった人達の意見はそれぞれに対して思うところがあるので、僕の意見を言っていこうかなと思います。

事情があって取れなかった人もいる

  • 実力としては十分だが、事情があって指定医を取れなかった人もいる
  • 非指定医でも良い診療ができている人もいる
  • 指定医だからって良い診療ができているわけじゃない

これは、全部正しい意見なんですよ。悔しいことに最後の意見まで含めて正しいと思います。
僕よりも良い診療をしている非指定医はいます。優秀な後輩とかを見てて思います。

病気によって取得できなかった方や、指定医レポートの承認に必要な指導医との関係がうまくいかずに取得できなかった方も実際に存在します。

ただ、それが全体の多数を占めるかというと、それはないでしょうね

少なくとも僕の周囲では、そういった事情で指定医を取得していない人はほとんどいないです。
むしろ多いのは、

  • 指定医業務により仕事が増えるのが面倒
  • 指定医取得のためのレポート作成が面倒

といった理由で取得していない人が殆どです。

もちろん、これは僕の周囲の話なので偏りはあると思いますが、
それでも「事情がある人」を前提として議論を組み立てることには違和感があります。

少数のケースをもとに、全体がそうであるかのように語るのは、あまり健全な議論ではないと思います。

吉田沙保里さんを例に出して、「女性の方が男性よりも強い」って主張されたら「いや、それは違うだろう」ってなりません?

キャリアとして必要性を感じていなかった

個人的に一番違和感があったのはこの意見です。

指定医はキャリアとして必要ない」という発想には、正直驚きました。

自分には「指定医取得=キャリアのため」という考えが一切なかったからです。

そもそも指定医をキャリアとして捉えている時点で、

精神科病院の勤務歴があまりないか、あるいは、同僚への配慮という視点が少し弱いんじゃないか、と感じてしまいます。

僕の中では、指定医はキャリアではありません
指定医というのは、精神科医としての運転免許だと思っています。

非指定医は仮免の状態です。一人では路上にも出られない。そんな状態に近い。

詳しく説明していくと

非指定医では、

  • 医療保護入院
  • 措置入院
  • 行動制限

といった対応を行うことができません。

つまり、精神科の重症患者さんを自分の責任で診ることができない、ということです。

さらに、入院対応が必要になれば、その都度、他の指定医を呼ばなければなりません。
これはつまり、自分の業務のために他の医師の手を煩わせる構造になります。

そのような状況で、指定医を「キャリアの一つ」として捉えていることに、僕は強い違和感を覚えます。

もし後輩や同僚が「キャリア的にいらなくない?」とか言ってたら、

たつみ

いいから早よ取らんかい‼️
俺の仕事が止められるねん‼️

と言ってしまうかもしれません。

…パワハラですね。

でも皆さんも、例えば友人や家族から

いざ遠出したかったら、君に運転してもらったらいいし
俺は免許はいらないかな〜

って言われたら腹立ちません?

こういう発想は、同僚としては少ししんどいな、と感じてしまいます。

すべての指定医が優秀というわけではない

これもよくある意見ですが、その通りだと思います。

指定医試験は主に法律や制度の理解を問うものであり、
臨床能力そのものを直接評価するものではありません。

また、指導医のレポートチェックが必須である以上、
本人の能力が乏しくても指導医の熱心な指導により合格するケースもあり得ます。

ただし、これはあくまで「指定医の質」の問題であって、非指定医が優秀という方向には繋がりません。

「指定医が必ずしも優秀ではない」という話と、
「非指定医にも優秀な人がいる」という話は、全く別の問題ですから。

良い医者を探そうとした時に、
非指定医の中から良い医師を探すよりも、
指定医の中から良い医師を探す方が、ずっと見つけやすいと思います。

僕自身、精神科クリニックで非指定医の先生のカルテを目にすることがありますが、実感としてそう感じます。

減算だったからここまでの議論になった?

本筋とは離れた話題なのですが、ここまで盛り上がったのは今回の改定が減算だったからじゃないかなと思っています。

もし今回の改定が減算ではなく加算だったら、ここまで議論は広がらなかったのではないかと思います。

指定医は指定医で「指定医でよかったー。やったー」で済んだでしょうし
非指定医も「うわ、指定医を取っとけばよかった。まあコツコツ頑張ろう」で終わっていた話かもしれません。

ただ、今回は40%カットという減算、明確な被害を被るものだったため、議論が過熱したのでしょう。

とはいえ、今回の改定の目的が
「指定医を優遇すること」ではなく、
質が担保されていない精神科診療への介入」であることを考えると、
ある程度は仕方のない側面もあると思います。

ちなみに…

なお、すべての非指定医の報酬がカットされているわけではありません。

  • 精神科経験20年以上+行政関連の業務をしている医師
  • 大規模な精神科病院で勤務している非指定医(指定医を取得するために頑張っている医師)

などは対象外とされています。

後者に関しては、適切な指導体制のもとで診療の質が担保されていると考えられているためでしょう。

前者はもう少し基準を緩和させてあげても良くない?とは思います。

12年とか15年とかでも良い気がします。
あるいは精神科専門医という別の資格を条件にするとかですね。

まあ、これは僕が決めることではありませんが。

今の主治医を疑う必要はありません

ここまでの記事を読んで「私の主治医大丈夫かな?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。

既に何回か診察を受けていて、主治医が指定医でなくても、過度に不安に思う必要はありません。

先程も書いたように、非指定医でも優秀な先生は確かに存在します。

実際に診療を受けてみて問題がないと感じているのであれば、
そのまま信頼して通院を続けていただいてよいと思います。

どんな肩書きよりも、実際の診療体験が最も重要です。

おわりに

今回は、指定医と非指定医の問題について書きました。

今既に精神科に通院している方は、別に何も不安になる必要はありません。

これから精神科を受診する方は、可能であれば
指定医と専門医の両方を取得している医師」を選ぶことをおすすめします。

もちろん、それでも必ず良い医師に出会えるとは限りませんが、
そんなことを言い出すと、きりがありませんしね。

ではまた。

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