
こんにちは、たつみです。
前回の記事では「心神喪失」「心神耗弱」についてお話しました。
今回は、それらを判断するために不可欠な手続きである「精神鑑定」についてお話します。
精神鑑定は、精神科医が活躍する場面ではありますが、同時に精神科医へ非難が向きやすいものです。
どう感じるかは皆さんそれぞれだと思いますが、精神鑑定について知ってもらってから改めて判断してもらいたいなと思っています。
逮捕された時の流れを知ろう
少し物騒な見出しですが、まずは通常の流れを知りましょう。
犯罪を犯した場合、警察に逮捕されますよね。
その後、検察が「起訴するかどうか」を判断します。
起訴されれば裁判が行われ、罪状に応じた罰が科されます。
ただし、事件の状況や本人の言動から
- 行動や動機が理解しにくい
- 明らかに発言が異常で、妄想や幻覚が疑われる
- 精神疾患の治療歴がある
などの場合、ざっくりいうと「なんかこの人変じゃないか?」と違和感を感じる場合に、
事件当時、きちんと判断出来る状態だったのか
つまり、前回の記事で書いたような、責任能力があるのかどうかということが問題になります。
これを評価するために行われるのが「精神鑑定」です。
精神鑑定は「時期」と「どのようにやるか」が大事
精神鑑定には
- いつ行われるか(時期)
- どのように行われるか(方法)
という、2つが大事です。
鑑定が行われる時期
精神鑑定は
- 検察が起訴する前に行われる「起訴前鑑定」
- 起訴後、公判の段階で行われる「公判・公判前鑑定」
の2つに分けられ、目的が異なります。
起訴前鑑定とは
起訴前鑑定は、
検察が「容疑者を起訴するかどうか」を判断するために行われる鑑定です。
言い換えると、この段階で「起訴の必要はない」と判断されれば、
その後、裁判に進むことはありません。
公判・公判前鑑定とは
公判・公判前鑑定とは
裁判官が「被告人は心神喪失なのか、責任能力があるのか」を判断するために行われる鑑定です。
公判中に行うか、公判前に行うのかというところが違いですが、
最近では裁判員制度の関係で、基本は公判前に行われることが増えてきました。

なんで裁判員制度が始まったら公判前鑑定が増えたの?
と思われるかもしれませんのでご説明しますが。
裁判員裁判では、一般市民が参加する以上、短期間で集中して審理を行うという前提があります。
一方、精神鑑定は時間がかかるものです。
特に鑑定留置(後ほどご説明します)となると、数カ月単位で時間がかかります。
鑑定結果が出るまで裁判を中断し、「2ヶ月後に再開しましょう」という進め方は現実的ではありません。
また、裁判の途中で専門的な新情報が加わると、専門家じゃない裁判員にとって、大きな負担になります。
こうした事情から、
現在は公判が始まる前に精神鑑定を済ませておくという運用が主流になっています。
どのような鑑定があるのか?
今までは時期で鑑定を見ていきましたが、今回はやり方で見ていきましょう。
精神鑑定には「簡易鑑定」と「本鑑定」の2つがあります。
簡易鑑定とは
簡易鑑定は、検察が精神科医に依頼して行う鑑定です。
この目的は本鑑定が必要かどうかを判断することです。
その名の通り比較的簡易な鑑定で、
勾留中に2〜3時間程度の診察時間で行われます。また容疑者の同意が必要です。
本鑑定とは
本鑑定は、裁判所の許可、要請のもとで行われるより詳細な鑑定です。
本鑑定には、さらに「鑑定留置」と「非留置鑑定」があります。
鑑定留置とは
鑑定留置とは
「精神科病院に入院し一定期間生活や症状を観察や聞き取りを行う鑑定」
です。
鑑定留置は、起訴前鑑定、公判・公判前鑑定のどちらでも行われます。
精神科病院に入院し、みっちりと精神科医が聞き取りや診察を行うため、
鑑定には2,3ヶ月ほどかかります。更に長くかかることもあるようです。
鑑定留置は、本人の同意がなくても入院させるため、人権への配慮から裁判所の許可が必要になります。
入院という言葉で誤解されるかもしれませんが、この目的は治療ではなく、あくまで事件当時の精神状態の評価になります。なので治療のための薬物投与はあまりされないみたいです。(これはおそらく施設差があります。)
非留置鑑定とは
非留置鑑定は、入院はしないで留置所や拘置所で聞き取りを行う鑑定です。
簡易鑑定と似ていますが、
- 起訴後でも行われる
- 裁判所、裁判官の要請で行われる
という点が異なります。
精神鑑定は裁判でどう扱われるのか?
上にあるような鑑定の結果、精神科医は「鑑定書」という書類を作成します。
鑑定書には
- 精神症状の内容
- 犯行当時の状態
- 弁識能力や行動制御能力への影響
などが書かれています。



あれ?心神喪失とか心神耗弱って書かないの?
それが滅茶苦茶大切なポイントです。
心神喪失・心神耗弱を判断するのは誰?
まず結論から言うと
心神喪失や心神耗弱を判断するのは、精神科医では有りません!
心神喪失は
- 鑑定書
- 捜査記録
- 証拠
- 公判でのやり取り
など、全てを総合して、裁判官が判断するものです。
精神鑑定は、あくまでその判断材料の一つに過ぎません。
精神科医が判決を裏で操ってる?



そんなこと言っても、精神科医の書類を判断材料にしてるんだろ?
精神科医が裏で判決を操っているんじゃないのか?



当然の疑問ですよね。
僕も正直そう思っていたので、知り合いの先生方に聞いてみました。
自分の周りに司法精神に携わっている先生がお二人ほどいらっしゃったので聞いてみました。



実際どうなんすか?



一昔前は精神科の意見が重視されることもあったけど、
今は事件の内容や捜査の情報、社会的影響も含めて、
総合的に判断されているね。
あくまで一材料って感じかな。



鑑定はあくまで判断の一つの材料でしかないね。
なんだったら、裁判官の中では結論は既に決まっていて、
それに近い判断をする精神科医を選ぶようなところもあるね。
B先生はかなりぶっちゃけた発言でしたが、お二人共共通しているのは
精神科医の意見だけで判決が左右されることはない。鑑定はあくまで情報の一つ。
ということですね。
当然のことではありますが、少しは安心されたのではないかなと思います。
おわりに
今回は精神鑑定についてお話しました。
とりあえず覚えて頂きたいのは、
精神科医が裏で判決を操作しているみたいなことは一切ございません。
そこだけはご安心ください。
ではまた。








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