こんにちは、たつみです。
前回の記事ではクライシスプランについてお話をしました。
クライシスプランでは、自分の状態に応じて
とはいえ、いざという時にすぐに対応を考えるのは難しいものです。
そこで今回は、病状の悪化を防ぐ、あるいは悪くなったとしても最悪の事態を避けるための「環境調整」の例をご紹介します。クライシスプランを考えるときのヒントにもなると思います。ぜひ参考にしてみてください。
環境調整って何?なぜ大切なの?
環境調整とは、生活の中で病気の影響が大きく出やすい場面をあらかじめ想定して、「安全に過ごせるように工夫すること」です。
以前の記事「精神科の治療の三本柱」でも触れましたが、薬物療法や心理療法と並んで、とても大切な治療の一つです。
今回はその中でも、特にトラブルにつながりやすい双極性障害の躁状態に絞ってお話しします。
躁状態で役立つ環境調整の具体例
躁状態が特に周囲とのトラブルに発展しやすく、個人だけでコントロールすることが特に難しいのでこの記事では躁状態に備えた環境調整についてお話しします。
躁状態で起こりがちなトラブルを挙げながら調整していきます。
①お金の使いすぎを防ぐ工夫
躁状態ではお金遣いが荒くなるので
- 貯金を使い果たすほどの買い物をする
- ネット通販やブランド品の衝動買い
- ギャンブルや投資への過度な支出
というようなことが起こります。
これを防ぐために大事なことは「お金を勝手に使うことが出来ない」という状況にすることが大事です。
一番手っ取り早いのは「財布を預かってお小遣い制にすること」です。
使い切る前提で「使い切っても良い額」を渡すということですね。
ただ最近ではこれでは不十分なことが多いです。
ネット通販や電子マネーがあるので、スマホ一つあれば大量に買い物が出来てしまいます。

じゃあスマホを預かれば良いんですね?



それが出来れば一番ですけど…
出来ますか?



・・・難しいかもしれません。
「実現可能か、現実的か?」、これは環境調整を考える上で最も大事なことです。
例えばこの場合でいうと、「Amazonや楽天にはクレジットカードを登録しない」「Apple Payなどの電子マネーは利用しない」がギリギリ実現可能なラインだと思います。
財布を預かってお小遣い制にすることは不調な時だけで構いませんが、クレジットカードの登録や電子マネーに関しては普段からしないでおくことが大切です。
②仕事でのオーバーワークを防ぐ工夫
仕事面ではオーバーワークや無根拠な自信から誇大なプレゼンをすることがあり、トラブルにつながることがあります。
起こりやすいこと
- 徹夜で仕事や勉強を続けてしまう
- 業務を抱え込みすぎて処理しきれなくなる
- 会議での発言が多すぎる
この場合の環境調整は「仕事の量や内容を周りが決めてあげる」ことです。
オーバーワークするとしてもこれ以上の仕事がなければできることがありませんからね。
プレゼンや会議など発表業務は別の方に代わってもらうことも大事ですね。
ですが…
この対処方法は悩ましいものだと思います。
なぜなら職場の同僚・上司へご自身の病気について詳しく語る必要があるからです。
残念ながら、全ての職場が協力的というわけではありません。
職場の協力が得られなさそうな場合、あるいは職場にそこまで話したくない場合は、主治医に休職について相談することもご検討ください。
③人間関係・SNSでのトラブルを防ぐ工夫
対人関係等のトラブルは大体2種類、罵倒を繰り返して人間関係を損なうこと、あとは性的逸脱から浮気等が起こることがあります。
起こりやすいこと
- SNSでの過剰な発信
- 電話やメールを何十件も送る
- 不適切な交際やトラブルにつながる行動
これに関しては正直に言うと「スマホを預かる」というのが一番良いのですが、やっぱり難しいところです。
なので他の方法として,
- SNSのアカウントを支援者も操作できるようにする
- マッチングアプリ等のアプリが入っていないかこまめにチェックする
- 調子が戻るまでは1人で誰かと会う約束をさせない
というのがお勧めですね。
「監視されているみたい」と感じたときに
いかがでしょうか、ここで挙げたのは環境調整の一例にしか過ぎません。皆さんに合うものをこの中から、あるいはこれらを参考に考えていただければ良いなと思います。
ところで、これを読んだ時に皆さんはこう思われませんでしたか?



環境調整って言うけどさ。
なんか小遣い制だのSNSのアカウントを共有しろだの、
凄い窮屈じゃないか?
信用されていないっていうか、監視されてるみたいなんだけど。
これは初めて環境調整について話し合った時によくある反応です。
ここまではっきりとは言われませんけどね。正直これは当然の反応だと思います。
ですがそれでも大切なことなのです。
何度も言っていますが、精神科の病気は皆さんの判断を狂わして本当は望んでいないことをさせてきます。
環境調整は病気に患者さんが振り回されないように、病気が良くなった時に元の生活をすぐに再開できるようにするために大事な工夫です。
最初から上にある全てをしていきましょうとは言いません。経過の中で必要だと感じた時に取り組んでいただければと思います。
おわりに
少し長くなりましたが双極性障害の環境調整のお話でした。
病気を問わず、環境調整で大事な視点は「やりたくても出来ない」という状況を作ることです。
お金をたくさん使いたいけど使えない。自分を傷つけたいけど傷つけられない。
この視点で考えてみれば、きっと良い方法が見つかるのではないかと思います。
今回はどちらかと言うと支援者の方向けの記事になりましたね。
患者さんは勿論ですが、支援しているご家族や周囲の方へ。
支える側もとても大変なことが多いと思います。無理せず、つらいときは一人で抱え込まずに医療機関や専門家に相談してくださいね。
支援者の健康は患者さんの健康に繋がります。どうか無理なさらずご自愛ください。
今回で双極性障害についての記事は一旦区切りになります。
次回はまた別の病気について触れていこうと思います。
ではまた。
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