こんにちは、たつみです。今回のタイトルは刺激が強い話なのですが、大事なことなのでお話しさせてください。
もし今、読むのがしんどい方は、無理に読まなくて大丈夫です。
いつか読めそうな気持ちになったときに、また読んでいただければ嬉しいです。
なぜ大切な話なのか?
うつ病だけでなく、精神科の病気全体を通して、
私たち精神科医が最も恐れていること——それは「自殺」です。
時々、他の診療科の先生から「精神科は命を診ない科」なんて言われることがありますが、
自分はこの点に関しては明確に“命を預かっている”と感じています。
「うつは甘え」などと言われることがありますが、甘えで自殺しますか?
うつ病は治療が遅れると怖い病気だということを是非知ってほしいです。
希死念慮と自殺企図について
希死念慮ってなに?
「死んでしまいたい」「消えてしまいたい」「もういなくなりたい」
うつ病の方は、そんなふうに思ってしまうことがあります。
これを医学的には「希死念慮(きしねんりょ)」といいます。「自殺念慮(じさつねんりょ)」とも言います。
この希死念慮は、漠然とした「死にたい気持ち」が心に浮かぶ状態です。
ですが、ただの“気の持ちよう”ではありません。れっきとした病気の症状です。
自殺企図とは
「自殺企図(じさつきと)」は、希死念慮よりも更に悪化した状態。切迫した状態です。
文字から想像してみてください。
企図とは企て図るという文字通り、具体的な方法を考えている状態です。
希死念慮は死にたいという思いを抱えている状態です。
自殺企図は死にたいという思い+それにむけて具体的な方法を考えている状態です。
具体的には
「ここから飛び降りれば…」
「縄をかければ…」
といったように、実際にどうすれば死ぬことができるかを考えている。これが自殺企図です。
希死念慮と比べると、自殺企図の方が明らかに危険な状態であることが伝わるかと思います。
希死念慮は難しい
自殺企図と希死念慮は病状としては自殺企図の方が重い状態なのですが、
実際に医師として判断に悩むのは希死念慮です。
僕らでも悩むということは、ご家族様や友人の方は更に悩まれるのではないかと思います。
というのは同じ「死にたい」という言葉でも温度感、本気度にはグラデーションが違うからです。
また人によって感情表現にも違いがあります。

あ〜明日テストやだなあ、死にてえ〜



ああ、希望もない、死にたい
どうですか?死にたいという言葉自体を捉えてみればどちらも希死念慮です。
ですが実際上の人が本当に死にたいというわけではなさそうですよね。
でも本当に?
実は下の人のほうが、ただ感情表現がオーバーなだけで、実はそうでもないのかもしれません。
あるいは、実は上の人の笑顔の裏には本人なりの悲哀があって本当に死にたいという気持ちがあるのかもしれません。
その判断はめちゃくちゃ難しいですし、100%確実にわかるということはないのです。
もちろん両方の人が本当に死にたいという気持ちがある可能性もあります。
これだけだとわかりませんよね。僕らも他の先生のカルテを見るだけでは分からないことが多いです。
実際に患者さんを診ても、悩むことは多いです。



結局どうしたらいいの?とりあえず病院に連れて行ったらいいの?



本人と話してみるといいと思います。
辛いことはないのか?困っていることはないのか?
今までそんなことを言う人だったのかというのも大事ですよね。
ただ迷ったら病院です。
今まで死にたいなんて冗談でも言わない人が突然言い出したら注意しておいた方が良いかなと思います。
でもその判断をすることは難しいので迷ったら病院です。
死にたいと言われたら〜家族ができること〜
まず大切なこと
外来でもよくある場面ですが、「死にたい」と言われたとき、まず大事なのは話を“聴く”ことです。
ポイントは、「話すかどうかは本人が決める」という姿勢でいること。
私たちも診察では、必要最低限のことを聞きつつ、あえて深く聞きすぎないようにしています。
思い出したくないことを無理に引き出してしまうと、かえって自殺のリスクを高めてしまうことがあるからです。
なので必要なこと以外は無理やり聞き出すことはせずに、本人が自ら話してくれるのを待ちます。
これはご家族の方もできることかなと思います。
「何があったの?」
「どうしたの?」
とついつい聞き過ぎてしまいがちなのですが、
うつ病の場合はそれが必ずしもプラスになるとは限らないのです。
本人のお話をきいて「辛いんだね」とあいづちを打つだけで十分だと思います。
環境を整えて、精神科の受診につなげよう
希死念慮を抱えている方において一番大事なことは、何事もなく精神科の受診を迎えることです。
そのために必要なことは2つです。
- 1人にしないこと
- 刃物などの危ないものは手の届かない場所に置いとくこと
この2つですね。死にたいと思っても行動に移さない状況にすることが大事です。
まとめ
この記事を読んで、「自分にもそういう気持ちがあるかもしれない」と思った方。
どうか、一人で抱え込まないでくださいね。
ご家族やご友人に頼るのも良いですし、
逆に他人の方が気楽に相談できるかもということであれば是非精神科の受診をしてもらえたらと思います。
ご家族やご友人、職場の方も判断に悩まれたら是非医療に繋げてあげてください。
もちろん医療にも限界はありますが、可能な限り本人ご家族双方にとって良い方向にできるように尽力させていただきます。
ではまた。
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