こんにちは、たつみです。
これまではうつ病がどんな病気か、その症状についてお話をしてきました。今回はうつ病の治療についてお話ししていこうと思います。
以前「精神科の治療の三本柱」という記事でご説明したように、精神科の治療は「お薬(薬物療法)、環境調整、心理療法」の3つをどう組み合わせるのかが大事です。今回の記事もその枠組みにそってお話ししていきますね。
軽症の段階でうつ病の方が来院されることは一部を除いてあまりないので今回は中等度〜重度のうつ病の方の治療についてご説明します。
環境調整
中等度から重度のうつ病の場合、一番大事なことは休養です!!
ゲームをする方ならイメージがつくかもしれないですが、うつ病ってのはドラクエでいうところのMPが枯渇している状態ですので、まずは休養してMPを回復させようというのが大事です。
この休養については個人的にものすご〜く言いたいことがあるのですが、今回の記事で書くのはやめておきます。次の記事でそのことを深く掘り下げようと思います。休養についてだけで記事を書くつもりです。
あとは入院治療という選択も検討されます。中等度の場合はその時の主治医の判断によりますが、重度の場合はほぼ100%入院です。
入院の1番の目的は「自殺のリスクを限りなく減らすこと」です。精神科病院はいわゆる身体科病院と比べて刃物や紐などのリスクのあるものを極力置かないようにされています。窓も開かないか、開くにしても少ししか開かないので飛び降り等も対策されています。
その他の入院の目的ですが、うつ病になる理由は職場のストレスだけというわけではありません、職場以外(家庭等)からのストレスを理由にうつ病になることがありますので「ストレスの原因から切り離す」という意味で入院することもあります。また、入院すると「治療することに専念する」という状況に身を置けることになります。この「ストレスの原因から切り離す」ということと「治療に専念する場所を作る」というのは精神科の入院においてとても大事なことです。
気をつけて欲しいこと
一つ気をつけて欲しいのですが、
僕ら精神科医師が勧めているのは「休職」です!「退職」ではありません!

こんなにきついのに辞めるなってことですか?



仕事をやめるなというわけではありません。
病気が治るまでは大きな決断をするのはやめましょうということです。
以前「精神科の病気の怖さとは」という記事でもお伝えしたのですが、精神科の病気の怖さとは「患者さん本来の判断能力、考える力を奪うこと」です。
仕事を辞めたいという考え方自体が、うつ病という病気のせいによるものかもしれません。うつ病が良くなるにつれて復職をしたいと思う方は意外と多いのです。それなのに、最初に退職という決断をしてしまうと、元に戻るという選択肢がなくなってしまうのです。これは離婚なども同様です。
決して僕たちは「退職するな!、離婚するな!」ということを言いたいわけではありません。重要な判断は病気が良くなって、患者さん自身でしっかりと判断できるようになるまで保留しましょうということです。
その上で退職や離婚という選択を取るのであれば、僕らもそこに関して何かを言うことも、止めることもありません。
薬物療法
うつの治療は抗うつ薬というお薬を使います。うつ病においては、脳内の中のセロトニン、ノルアドレナリンという脳内物質が低下していることが原因とされていますので、その量を増やすお薬を使います。
セロトニンを上げる薬をSSRI 、セロトニン・ノルアドレナリンの両方を上げる薬をSNRIと言います。
それに加えてNaSSAとかいうのもあります。今からそれぞれを下に書きますが、当然患者さんが覚えておく必要はないです。こんなんあるんだなくらいに思ってもらえたら良いです。下に挙げた以外にも抗うつ薬はありますのでその点もご了承ください。
※前に書いてあるのが商品名でそのお薬の一般的な名前です。よくわからないと思われるのですが、後ろの名前で処方された場合はジェネリック医薬品だというふうに思ってくれれば良いです。
🟦SSRI(セロトニンを上げる薬)
- ルボックス、デプロメール(一般名:フルボキサミン)
- パキシル(一般名:パロキセチン)
- ジェイゾロフト(一般名:セルトラリン)
- レクサプロ(一般名:エスタシロプラム)
🟧SNRI(セロトニン・ノルアドレナリンの両方を上げる薬)
- トレドミン(一般名:ミルナシプラン)
- サインバルタ(一般名:デュロキセチン)
- イフェクサーSR(一般名:ベンラファキシン)
🟨 NaSSA(セロトニン・ノルアドレナリンの両方を上げる薬)
- リフレックス/レメロン(一般名:ミルタザピン)
NaSSAとSNRIはどう違うんだろうとおもわれるかもしれませんが、まあそこらへんはあまり気にしないでください。



セロトニン上げる薬より、セロトニンとノルアドレナリンって両方あげる薬の方が強い薬なの?



よくそれ聞かれるんですけど、SSRIよりSNRI、NaSSAの方が強いと言うわけではありません。意外ですよね〜。
うつの治療で使うのは抗うつ薬だけではありません。その他にも症状や治療の強度を上げるために他のお薬を追加することがあります。ですが、そこまで説明すると長くなるのでまたの機会にしますね。
薬物療法の流れ
精神科を受診して中等度〜重度のうつ病と診断された場合は抗うつ薬での治療が開始します。
抗うつ薬の効果が出るのには大体2週間かかると言われています。また、最初の数日間は体がうつの薬にびっくりして胃のむかつきなどの副作用がでますが、これは数日間で基本的になくなります。
この治療効果を見ながら、お薬の量を増やしたり、あるいは別のお薬を使います。
同じグループの別の薬を試したり、他のグループの薬を試すこともあります。



うつ病のお薬って一度飲んだら辞められないの?



うつ病に問わず、精神科のお薬に関して言えば基本的には内服の継続を勧めています。ただ、病気の状態に応じてお薬の量を減らすということは
全然あります。
この質問はよくある質問です。うつ病は他の疾患に比べてお薬をやめることが出来る確率は高い疾患ではありますが、それでも内服の継続をお勧めしています。
理由としては、薬をやめて再発する方が多いこと、また、再発した場合は以前飲んでいた量よりも更に飲む量が増える可能性があるためです。
初めてうつ病にかかったが、治療がうまくいき、元の環境に問題なく戻れた場合などは一度お薬をやめることも試すことはありますが、再発した方の場合は基本的にお薬をやめることは勧めていません。ただ、患者さんの状況によるというのが実際のところです。主治医にその希望をお伝えすることは全然問題ないと思いますので、その希望がある方は主治医と相談をしてみてください。
心理療法
うつ病の方の心理療法は治療の最初じゃなくて、薬物療法が効果が出てきて、頭が働くようになってから効果を発揮し始めます。
これは何度もお伝えしていますが、治療当初は頭が働いていないため、そもそも自発的に何かお話しできる状態ではありません。たとえ話せたとしても治療当初は自責の念や不安で頭の中が一杯なので、会話が一方的になってしまってあまり心理療法の効果はありません。
ですがお薬によって、考える余裕が出てき始めると心理療法の入る余地が出てきます。
うつ病になる方は責任感が強く、「なんでも自分で解決しなきゃいけない」というある種強迫観念のようなものを持っている方が多いです。そのため、心理療法で「人を頼れるようにすること」、「自分の不調に自分で気付けるようになること」などが出来ることを目指します。
まとめ
いかがでしょうか、今回ご説明したのは、うつ病治療のほんのさわりでしかありませんが、治療に関してのイメージがつきましたか?
お役に立てば幸いです。
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