双極性障害の治療薬を精神科医がやさしく解説します

こんにちは、たつみです。

今回は双極性障害のお薬の治療について記事になります。

なんとなくイメージがつかめれば良いかなと思い書かせていただきました。

目次

双極性障害の治療薬についてざっくり解説

以前の記事でもお伝えしましたが、双極性障害の治療は「気分の変動を抑えるということ」にあります。

この図の右のようなイメージですね。
そこでよく使われるのが「気分安定薬」という薬です。
それに加えて「抗精神病薬」というお薬を追加で使用することでより細かく気分の調整をするという形になります。

双極性障害の治療は症状が激しい急性期安定した状態の維持期の2つの時期があり、微妙に治療方法が違うんですが、そこまで覚える必要はありませんのでこの記事では特に区別せずに書いています。

気分安定薬

  • リチウム
    • 躁状態とうつ状態の両方を予防する薬
    • 血液検査で量をチェックしながら使います
  • ラモトリギン
    • 特にうつ状態の予防に効果的
    • 少しずつ量を増やしていくのが特徴
  • バルプロ酸カルバマゼピン
    • 躁状態の予防に使われることが多い薬
    • てんかんの治療薬としても使われます

基本的に使われるのはリチウムですが、副作用のために使えない方や、リチウムだけでは不十分な方には、他の気分安定薬を組み合わせて使うことがあります。

抗精神病薬

双極性障害の治療のメインは上にもあるように気分安定薬です。
ですが、それだけでは不十分なことが多いので抗精神病薬を組み合わせて使います
抗精神病薬はオランザピンという薬以外は、基本的に躁状態かうつ状態のどちらかに絞って使います。

それなら全部オランザピンで良いんじゃない?

たつみ

そう思いますよね。
ただオランザピンは太りやすいという特徴があります。
ですので女性の方には使いにくいというのが実情です。

前提として、オランザピンはとても良い薬です。効き目はしっかりありますし、僕ら精神科医も重宝している薬です。
ですが、オランザピンは食欲をあげて太りやすくなってしまうという特徴があります。

女性の方にはそれだけで処方が躊躇われる薬なのです。実際女性の方では一定数、この副作用を嫌がってオランザピンの内服をやめてしまう方がいらっしゃいます。

どれだけ良い薬も飲まなくては意味がありません
オランザピンは特に女性に関しては最終手段という立ち位置だと自分は思っています。

この記事を読んで、「私オランザピン内服してる!」と思った方。
絶対にお薬を自己中断しないでくださいその薬を使われているのには理由があるはずです
主治医の先生にしっかりと相談した上で、使われている理由や他に選択肢がないかを尋ねてみてください。

抗うつ薬(うつ状態が強いときに)

基本的にはよっぽどじゃないと使いません。何度も言いますが躁状態になってしまう可能性があるからです。
気分安定薬や抗精神病薬など、あれこれ手を尽くした後にのみ使用します。

怪しいクリニックにご用心

双極性障害には抗うつ薬が使用されうことは本当に稀であるということはお伝えしました。

逆に双極性障害と診断されてすぐに抗うつ薬を処方された場合は少し怪しいと思った方が良いかもしれません。
しっかりと説明がないまま抗うつ薬が処方された場合も同様に疑った方が良いかもしれません。

なぜこのようなことを突然話すのかと言うと、
双極性障害は理論上「気分安定薬」、「抗精神病薬」、「抗うつ薬」のすべての薬が使える病気です。

悪い精神科クリニックの中には、

すべての患者に「双極性障害」と診断をつけて、全ての薬を処方する

というやり方をしているクリニックがあります。
実際に自分もそのような病院から患者さんを紹介されたことがあります。

そのようなクリニックに皆さんが被害に合わないように、不快なお話ではありますがお伝えさせてもらいました。

双極性障害の治療は感情を殺すことではない

双極性障害の治療をしていると、たまに患者さんから

なんかすごいイライラしたんですよ。
最近、躁状態がわるくなったんでしょうか。

たつみ

そうなんですか?
ちなみに何かきっかけとか思い当たるものはありますか?

仕事で変なクレーマーに滅茶苦茶失礼なこと言われたんですよ

たつみ

それは、イライラして当然です。
悪くなったわけではなく自然な心の反応なので、
今のところはそこまで気にしなくて良いと思いますよ。

えっ‼️あ、そうなんですね。

双極性障害の治療中の方は「イライラ=躁状態」みたいな考え方をしがちですが、そんなことはありません

イライラすること、悲しむこと、不安な気持ちがあること、それは全ての人が感じる大切な感情です。

精神科の治療はあくまで、病気による極端な感情を整えるためのものです。
皆さんの感情を殺すものではありません。

一度病気になってしまうと、今感じている感情が病気なのか自然なものなのか不安になる方はいらっしゃいますので、自分の外来では、その感情に対してそれは自然なものなのか一緒に考えることを重要視しています。

皆さんも不安に感じた場合は主治医の先生に確認してみてください。

おわりに

双極性障害の治療は、気分の波をできるだけ小さくすることを目指して行われます。
そのために、気分安定薬を中心に、必要に応じて抗精神病薬や抗うつ薬を組み合わせて治療を進めていきます。

ただ、薬の効果や副作用の感じ方は人それぞれです。
大切なのは「自分に合った薬を見つけて、無理なく続けていくこと」です。
自己判断で薬を中止してしまうと再発のリスクが高まりますので、必ず主治医と相談しながら調整していきましょう。

そしてもうひとつ大事なのが、「もしものときへの備え」です。
次回は、再発防止や緊急時に役立つ クライシスプラン(危機対応計画) についてお話ししたいと思います。
「自分や家族を守るための安心の準備」として、ぜひ知っていただければ嬉しいです。

ではまた。

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