こんにちは、たつみです。
今までは認知症の方の治療に関して重点的にお話してきました。
正直にいうと、今回の記事が一番認知症においてご家族の方が知りたいことじゃないかなと思っています。
それは「認知症の方が利用できる福祉サービス」です。
認知症の方は最終的にはどのようなサービスを利用して家族のご負担を減らし、本人の安全を担保するのかという話になるのが実情です。
今の日本で利用できるサービスについて知っておくことは損ではないと思います。
意外とサービスは多いので、今回は認知症ケアのすべての基本となる介護保険を中心にご説明できればと思います。
知っておこう介護保険〜認知症の支援の土台です
介護保険という制度をご存知ですか?名前だけは聞いたことある人は多いのではないかと思います。
実際に外来をしていると
「介護保険ってどんな制度ですか?」
「申請とかってどうしたらいいんですか?」
というご質問は結構きます。まあ当然ですよね。必要な時がこないとわからないものです。
この記事ではざっくりと介護保険の制度と、介護保険で何ができるのか、どのように申請するのかについてご説明しようかなと思います。
介護保険って何?
介護保険制度は、2000年から始まった高齢者のための社会保険制度です。
病気や老いによって介護が必要になった時、費用の一部を介護保険でまかなってサービスを受けられるしくみです。
介護保険を受けられる人(被保険者といいます)は下のように決まっています。
年齢 | 条件 |
65歳以上の人(第1号保険者) | 寝たきりや認知症で介護や支援を要する人 |
40歳〜64歳までの人(第2号保険者) | 老化による病気が原因で、介護や支援を要する人 |

この40歳〜64歳の人の
老化に起因する病気ってなんのこと?



これは若年性アルツハイマー型認知症等の若い人がなる認知症のことです。
多くの方は第1号保険者になりますので、今回は第1号保険者の話と思っていただけたらと思います。
正直にいうと、認知症で病院を受診してくる時点で65歳を超えていることがほとんどなので
「認知症で困ったら介護保険の相談ができる」と思ってもらえれば良いかなと思います。
それさえわかっていれば病院やクリニックで相談できますからね。
介護保険で何ができるの?
介護保険で何ができるのか、それはその人がどの区分に割り当てられるかによります。
介護保険を申請した場合、市区町村によって「非該当」「要支援」「要介護」のいずれかに判定されます。
非該当は読んで字の如く、今の段階では介護保険の利用は必要ありませんと判断されたということです。
「要支援」、「要介護」は介護保険が利用できますが、その目的と利用できるサービスが変わってきます。



要支援?要介護?
どっちがどうなの?



ここら辺結構わかりにくいんですよね。
皆さん最初は「?」っという反応をされます。
簡単にいうと…
要支援:生活のうち一部分が困っているため、その一部を支援する。「これ以上悪くならないようにしよう、極力今の生活を維持しよう」というのが目的です。
要介護:生活全般で手助け、介護が必要な状態。「日常生活を支える」ことが目的
これを見てわかるように、要介護は重度の患者さんに適応されます。
要支援、要介護にはその中でも、本人の状態に応じて分類されており、
要支援は1と2、要介護は1〜5で分類されています。数字が大きいほどに利用できるサービスが手厚くなります。
では要支援と、要介護で受けれるサービスについて見ていきましょう。
要支援でできること
上で書いたように、要支援の方はある程度自宅生活を送ることができます。
このある程度というのがポイントで、生活の中には何かしらお困りごとがあります。
逆に言えば、「その困りごとをある程度解消すれば日常生活を送れる」ということでもあります。
その困りごとを解消し、極力その状態が維持できるように
「ちょっとした手助けと悪化予防のためのリハビリをしましょう」というのが要支援の考え方ですね。
具体的には
- 介護予防デイサービス(軽運動・脳トレ)
- 介護予防訪問介護(掃除・買い物など)
- 配食サービス
- 軽度な福祉用具貸与(手すり、杖など)
このようなサービスが使えます。これらは介護予防サービスとも呼ばれます。
ちなみに要支援であれ要介護であれ、サービスを利用するにあたって「ケアプラン」という介護サービスの利用計画書を作ります。
要支援の方の場合は「地域包括支援センター」という高齢者のための“なんでも相談窓口”みたいなところが作成してくれます。
ちなみにケアプランの作成だけじゃなくて、認知症のことや介護のことなど本当にどうしたらいいのかわからない場合は地域包括支援センターに行って相談してみることをおすすめします。
要介護で利用できるサービス
要介護は上でも書いたように、生活全般にわたり介護が必要な方です。
感覚的には、「サービスを使わないと家で生活することはかなり難しい、あるいは家でなく施設も検討しなければいけない」みたいな方が適用になることが多いですね。
要介護になると要支援に比べて利用できるサービスの幅がグッと広がります。
利用できるサービスの幅が広いというか、それだけ必要な支援が多いというか…
まあなんとも言えない感じですが。
利用できるサービスは以下になります。
- 通所介護(デイサービス)
- 訪問介護(入浴介助、調理)
- 短期入所(ショートステイ)
- 特別養護老人ホームなどの入所
- 福祉用具のレンタル・住宅改修(段差解消、手すり設置など)
個人的にはこの太字の部分が特に重要なところと思います。
要介護になってくると自宅生活を送ることが困難であるため、ショートステイや老人ホームの入所など
施設に泊まる、あるいは施設に入所するという選択肢が出てきます。
ちなみに、要介護の方もサービスを利用する以上、ケアプランの作成が必要になりますが、
要介護の方の場合ケアプランの作成は「ケアマネージャー(介護支援専門員)」という専門資格をもった方が担当します。
要介護の方の場合、医療との連携や老人ホームなど、サービスが複雑化するので、よりそれに詳しい方がケアプランを作成します。
どうやって申請するの?
介護保険を利用するには、市区町村への「要介護認定申請」が必要です。
お住まいの市区町村の介護保険窓口(介護保険課など)で申請ができます。
あるいは地域包括支援センターや病院のソーシャルワーカーを通じて申請することも可能です。
(これは代理人として役場に申請してくれるという話ですけどね)
申請の際に必要な書類は以下になります。本人が申請する場合と家族等の代理人が申請する場合でまとめますね
本人が申請する場合
要介護認定申請書(窓口や役場のホームページで入手できます。)
介護保険被保険者証
本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
主治医の情報(主治医意見書という書類の依頼先ですね)
これが基本です。代理人が申請する場合は上のものに加えて
委任状または代理人届出書(本人の署名か捺印が必要です)
代理人の本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカード)
介護保険者被保険者証って?



介護保険被保険者証って何?



介護保険被保険者証は65歳になった段階で役場から本人に郵送される書類です。
介護保険被保険者証は65歳になった段階でご自宅に郵送されます。これは認知症の有無に関わらず全ての65歳以上のに送られてきます。
いざ必要な時に本人が覚えていないこともあるので、ご家族で保管場所を共有しとくことをお勧めします。
(無くしても再交付はしてもらえますがその分時間がかかります。)
まあ必要書類に関しては、基本は上のものを用意してくれれば問題ありません。
ただ自治体によって柔軟な対応をしているところもあって
「身元が保証されていていれば、申請書と介護保険被保険者証の原本あればOKですよ〜」
(身元が保証されていてというのは、病院のソーシャルワーカーや近くにお住まいの家族等ですね)
みたいな自治体もありますので、最終的には自治体の窓口に相談してもらった方が良いと思います。



え、それはそれで悪用されそうで怖くない?



まあご不安はありますよね。
ただ現実的には悪用は難しいと思います。
また次の記事でお話ししますが、申請の後は役場が調査として本人の様子を確認します。なので詐欺みたいなことはなかなか起こりにくいと思います。
また介護保険の原則は「現物(サービス)支給」です。介護度に応じて支給額はかわりますが、いずれもサービスの提供という形ですので、仮に詐欺したとしてもお金をもらえるわけではないんですよね。
なので悪用はそこまで現実的ではないかなと思います。それよりかはある程度柔軟に対応して介護に迅速に繋げることが大事という役所側の配慮なのではないかと思います。
それに申請から認定が降りるまでは時間がかかるので、問題があればその間に対応できるということもあるかもしれません。まあこれは役所の方に聞いたわけではありませんのでただの推測ですが。
主治医の情報っているの?



主治医の情報っているの?
病院受診していないとやっぱりだめ?



介護保険の原則は老化(認知症)に対しての支援です。
今生活が困っているのは認知症が原因だと医師に保証してもらう必要があります。
基本的に介護認定に病院の受診は必須です。
クリニックでももちろん可能ですし僕もクリニックで書類を書いたこともありますが、個人的には認知症でお困りの場合は精神科病院の受診をお勧めします。
理由としては、病院の方がソーシャルワーカー等支援制度に詳しい職員がいるので、病院経由で介護保険の申請ができますし、必要なサービスに対して病院の方からも情報提供ができるからです。
ソーシャルワーカーは慣れていますし、病院所属ということで身柄も保証されているので、役所の対応もスムーズなことが多いです。
以前お話ししましたが、いざという時に入院もできますので、認知症に関しては病院の方がクリニックより圧倒的に強いと感じますね。
おわりに
今回は介護保険制度についての簡単なご説明と必要な書類についてご説明しました。
この後にも介護保険の認定と話は続くのですが、盛りだくさんになってしまうので一旦ここで区切らせていただこうと思います。
介護保険は本人だけでなくご家族にとっても、めちゃくちゃ、それはもうめちゃくちゃに大事な制度です。
正確に把握する必要はないのですが、どういうものか雰囲気だけ掴んでいただけたらなと思います。
ではまた。
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