こんにちは、たつみです。
前回はアルツハイマー型認知症についてご説明しました。今回はお話しするのは血管性認知症です。
「血管性認知症?何それ?」と思われる方も多いでしょうが、
日本人では2番目に多い認知症になります。おそらく今後も増えてくるんじゃないかと思いますので、ぜひ皆さんに知っていただければと思います。
血管性認知症って?
血管性認知症とはその文字通りの病気で、
「脳の血管がダメージを受けることで、その脳の血管が栄養している脳の機能が落ちる」
という病気です。
すこしややこしいでしょうか。まずは血管というものの役割を知っておく必要がありますね。
「そんなの知ってるわい」という方は読み飛ばしていただいて構いません。
知って欲しい血管の役割
精神科の病気ではそこまで話題にならない血管ですが、血管とは全ての医療の基本となる存在と個人的には思います。
なぜなら、
血管がない部分には栄養も酸素も、どんな薬も届かせることはできない
からです。
どういうことか?
僕ら精神科はお薬をつかって病気を治します。
これは、「処方した薬が腸で吸収され、血管を通って脳に届く」という前提に基づくものです。
体の肺や脳、心臓などの臓器を「街」とするならば、血管はその町たちをつなぐ「道路」のようなものです。
各町がそれぞれ独立して生活を維持することができれば良いのですが、残念ながらそうはいきません。
各町はお互いに道路を使うことでお互いに必要な物資の移動を行っているのです。
ではその道路が突如使えなくなったらどうでしょうか。当然その先にある街は必要物資が足りなくて破綻します。
これと同様のことが体でも起きているのです
脳の場合
血管が壊れると、今までその血管が物資を届けていた脳の領域もダメになってしまう
と言うことがおきます。血管の壊れ方には2種類あり
脳の血管が壊れて出血が起こることを「脳出血」
脳の血管が詰まって血液が流れない状態を「脳梗塞」といいます。
ちなみに脳出血と脳梗塞をまとめて「脳卒中」と言います。
いずれにせよ、血管が壊れて血液が脳細胞にいかないという点では同じです。
血管性認知症は脳梗塞が原因でなることが多いので、以降の説明は脳梗塞によって起こったというふうに考えてください。
血管性認知症は気付かれにくい
血管性認知症は実は結構気付かれにくい病気です。なんだかよくわかんないけど、病院に来て検査したら血管性認知症でした。みたいなことは結構あります。

でも脳梗塞って大きな病気でしょ?
よく芸能人が脳梗塞で病院に運ばれたってニュースもあるし…



ちっちゃい血管が詰まった場合の脳梗塞は特に目立った症状が
ないことがあります。
脳梗塞というと「麻痺を引き起こす病気」と思われる方も多いですよね。
僕もそう思います。ですが、一口に脳梗塞といっても実際は症状は結構ばらつきがあります。
どの血管が詰まるかによって症状が違います。
大きい血管が詰まった場合は脳の広い領域がダメージを受けるので、その症状は激しくなります。
ですが、細い血管が詰まった場合は、脳の狭い範囲がダメージを受けるので、症状はそこまで目立ちません。
ただ、そのダメージは徐々に蓄積していき認知症と形で症状として現れます。
ちなみにこれは、大きい血管の脳梗塞では血管性認知症にはならないというわけではありません。
当然大きい血管にダメージを受けても血管性認知症になりますし、症状は重いです。
ただ、これらが見過ごされることはあまりありません、麻痺などのわかりやすい症状があるので大抵病院で治療を受けているからです。
血管性認知症のポイント
血管性認知症のなんとなくのイメージはつかめましたでしょうか。
血管性認知症はどちらかというと、「大きい血管が詰まっておこる」というよりも
「小さい血管が気づかないうちに次々と詰まっていて、気がつけば認知症が進んでいた」みたいなケースが多いです。
どんな人が血管性認知症になるの?



どういう人が血管性認知症になりやすいの?



血管に負担をかけている方がなりやすいですね。
具体的にいうと、高血圧や糖尿病などの生活習慣病のある方ですね
血管性認知症は血管が破綻しなければ起こりません。当たり前のことですが。
日本人は塩分の摂取量が多いので、血管性認知症が起こりやすいと思われます。
血管性認知症の最初の症状
血管性認知症では、「前頭葉」と「白質」という脳の領域がダメージを受けることが多いです。
その領域の血管は細くて、「高血圧などの生活習慣病によるダメージ」がたまりやすい弱点のエリアなんです。
その領域は感情のコントロールを司っています。他にも実行機能という「ものごとを計画立てて行動する」という能力や意欲にも関わっていますので
- 怒りっぽくなる(感情のコントロールが効かなくなる)
- 無気力になる(意欲がわかなくなる)
- 料理など手順が必要な作業を間違えるようになる(実行機能の低下)
のような症状が出ています。
他にも、小さい血管とはいえ脳梗塞がたくさん起きることで、体が動かしにくくなったりします。
特に歩き方に症状が出てくることが多いです。
歩幅が狭くなったり、「つま先歩行」という特徴的な歩き方をします。
(気になる方はyoutubeで調べたら動画が出てくると思います。)
これが血管性認知症の症状です。
血管性認知症の進み方
血管性認知症は、他の認知症と進み方が違います。
アルツハイマー型認知症といった他の認知症は「ゴミが徐々に脳の血管につまっていく」という病気の進み方をするので
進行は緩やかな坂のように時間と共に進んでいきます。
ところが血管性認知症は「新たに他の血管が詰まった時」に病気が進行します。
ですので、進み方は坂ではなく階段状に進んでいきます。


ただ逆にいえば、「新たに他の血管が詰まらなければ認知症は進まない」ということでもあります。
ですので血管性認知症では「脳梗塞を起こさないこと」ということが極めて大事です。
予防ってどうするの?



血管性認知症を予防するのってどうしたらいいの?



繰り返しになりますが、脳梗塞を起こさないようにすることです
具体的には「健康的な生活をする」ことです。
血管性認知症の危険因子として
・加齢
・運動不足
・高血圧
・糖尿病
・脂質異常症
・肥満
・喫煙
・心房細動
があると言われています。
どうでしょう?一番最後の心房細動を除けば、生活習慣を気をつけることで対処できそうですよね。
もちろん、糖尿病や脂質異常症などは遺伝の要素もあるので、ある程度防げない部分もあるのですが
運動不足などは通勤や買い物で歩く時間を設けるなど、できることはありそうです。
自分は肥満なので痩せなければいけません。まあ普段の自分のXからはあまり説得力はありませんが…



もう高血圧になってるんだけど…



高血圧、糖尿病、高脂血症などの病気にかかった方でも大丈夫です‼️
お食事に気をつけて、お薬をしっかり飲んで、良い状態を保つようにしましょう‼️
すでに生活習慣病になったからといって健康的な生活をして意味がないというわけではありません。
気をつけて生活していくことが大事ですから。



もう血管性認知症になっちまったよ



これは予防だけでなく、
進行しないようにするのにも役立ちますよ。
健康に気をつけるのに遅すぎることはありません。
すでに高血圧や糖尿病、高脂血症になっている方はしっかりと薬を飲んで症状の安定を目指しましょう。



予防予防うるさいなあ
どうせ年取ったら認知症になるんだから別にいいだろ



脳血管性認知症の予防は、つまるところ脳卒中の予防ですよ。
小さい血管の梗塞による血管性認知症とは「運良く詰まったのが小さい血管だったから認知症だけで済んでいる」ともいえます。
これがもし大きい血管であった場合は、半身麻痺等を起こしてもおかしくないのです。
どうでしょう?予防した方が良いと感じませんか?
おわりに
いかがでしょうか、血管性認知症についてまとめてみました。
最後は少し脅すかのような文章になってしまいましたが、血管性認知症は唯一予防可能な認知症です。
それだけでなく、脳梗塞などになったらもっと大変なことになります。
今のうちからできる対策をしていきましょう。
ではまた。
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