
Xでもご報告させて頂きましたが、
私、たつみは精神保健指定医試験に合格し、この度無事に精神保健指定医となることができました。
皆様にはXでお祝いのお言葉やいいねを頂き本当にありがたく思っています。
今回は改めて、「精神保健指定医」という資格について少しご説明させていただきます。
精神保健指定医って?
以下は厚生労働省からの精神保健指定医に関しての説明です。
- 精神保健指定医制度は昭和62年の精神衛生法改正(精神保健法の成立)により
創設された。- 精神科医療においては、本人の意思によらない入院や、一定の行動制限を行う事がある
ため、これらの業務を行う医師は、患者の人権にも十分に配慮した医療を行うに必要な資
質を備えている必要がある。
そのため、一定の精神科実務経験を有し、法律等に関する研修を終了した医師のうちか
ら、厚生労働大臣が「精神保健指定医」を指定し、これらの業務を行わせることとしたもので
ある。
ー厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/content/001069801.pdfより
この本人の意思によらない入院は、「医療保護入院」「措置入院」という本人以外の同意による入院形態のことになります。一定の行動制限とは「隔離」や「拘束」というものにあたります。
(詳しくは以前の記事:知ってほしい精神科の入院の種類〜精神科は強制入院させるんでしょ?〜をご覧いただけますと幸いです。「隔離」「拘束」に関してはまた後日どこかの記事でまとめようと思います。)
このように、精神保健指定医とは、厚生労働大臣が指定する国家資格のようなものです。
精神保健指定医とは
国から「精神科に関係する法律を正しく理解し、それに従って医療を行う能力と資格がある」と保証してもらった医者になります。
精神科医としては、精神保健指定医をとってようやく一人前という位置付けになります。
なんでそんなに喜んでんの?

一人前なのはわかるけどそこまで喜ぶ?
今までも精神科医として勤務していたんでしょ?



もちろんそうです。
ですが、
精神保健指定医ではできる業務量が一気に変わります‼️
精神保健指定医は、精神科の「医療保護入院」「措置入院」という重症な患者さんに適用される入院形態をとることができます。
重症とは、最も治療を頑張らなければいけない患者さんということです。一番入院を必要とする患者さんです。
一番入院を必要とする患者さんなのに、自分で入院をとることができない。これはかなり歯痒いものです。



え、じゃあ指定医じゃない精神科の先生は
重症な患者さんをみてないの?



もちろん診ています‼️
ですが、指定医の指導で診療を行っているという形になります。
入院の導入は指定医の先生にしていただくことになるのです。
この指定医の導入がかなり気まずいのです。
今までのたつみの入院の導入
では、指定医を取る前の自分の入院の導入を例に挙げてみましょう。



………..



重度のうつ病が考えられます。
このまま外来で見ていくのは自殺の恐れもあり危険です。
病気のせいでご自身で判断することも難しい状態ですので
ご家族の同意での医療保護入院が必要になると思われます。



家で見るのも不安ですし、良くなってもらいたいので
入院をお願いします。



わかりました。改めて指定医の先生に診察をしていただきますね。



精神保健指定医の〇〇と申します。
改めて私の方で診察をして、
医療保護入院の手続きをさせていただきます。
手続きは私がして、入院治療はたつみの方が担当します。



急に知らない先生でてきた?
さっきまでの先生はじゃあ何?



これで医療保護入院となります。
では私はこれで…



もうベテランの先生が見てほしいけどなあ



って思ってそうな怪訝な顔してる〜



入院は僕だけでなくて、他の医師とカンファレンス等行いながら
治療を進めていきますのでご安心ください‼️



まあ、他の先生も様子を気にしてくれるならいっか



それじゃあよろしくお願いします。
まあ毎回こうなるわけではないんですが、「さっきまで治療のことを整然と話していたのに、半人前なの、この人?」
みたいな感じになることがあるんですよね。
あとはまあ指定医の先生も指定医の先生のお仕事があるので、入院の導入のためにお時間を割いていただくことに後輩として申し訳なさがあります。
その気まずさ、煩わしさから解放されたのは本当に嬉しいのです。
指定医は結果が出るのにかなり時間がかかる
僕らがもう一つ指定医の合格に喜んでいる、それは結果が出るまでにかなり時間がかかるのです。
試験から結果がでるまでに丸々1年かかります。
指定医の試験には「書類審査(レポート)」と「口頭試問」があります。
書類審査に合格した医師のみが口頭試問に進む形になります。
具体的なスケジュールですが
このように丸々1年かかるのです。仮に落ちた場合、最短で翌年の6月にレポートを再提出するのですが、
当然その結果がでるのはまた1年後です。
その1年間、またあの気まずい時間が続くと思うと……
僕らが喜ぶのもご理解いただけると思います。
専門医とはどう違うの?



なんか専門医?ってのもあるんでしょ?
あっちはどうでもいいの?



精神科の専門医は正直そこまで業務に影響がないので
あまり重視されないのが実情です。
精神保健指定医と専門医はそもそも認定する団体が違います。
「精神保健指定医」は「厚生労働省」が、簡単に言えば国が認定する資格です。
「精神科専門医」は、「日本精神神経学会」という、医師が運営する精神科医の団体が認定している資格です。
精神保健指定医は、医療保護入院、措置入院という入院を取り扱う権利があるのですが、
専門医はそういうのはありません。精々扱える薬が増えるくらいでしょうか。
ですので、精神科医の中では「精神保健指定医>>>>>>精神科専門医」という扱いです。



じゃあ専門医は意味ないの?



意味がないというわけではありません。
業務の幅が異なるのですが、専門医にも意味があります。
そもそも専門医と指定医では保証されている能力が違います。
簡単に説明しますと
精神科指定医→法律を正しく運用し、患者さんの人権を尊重することができる。
精神科専門医→精神科全般に対しての知識があり、正しい診断と治療方針を考えることができる。
とまあこのように違いがあります。
医者以外にはいらない情報?



ここまで読んだけど、結局医者以外にはいらない情報?



そんなことはありません。
これらの資格をもっている医者かどうかを調べるだけで
変な医者と当たる可能性が減ります。
まあかなり不躾な言い方ではありますが、
精神保健指定医をもっているということは、「入院がたくさん来る+法律を正しく運用している病院で重症者の治療の経験がある」ということの証明であり。
精神科専門医をもっているということは、「診療経験だけでなく、幅広い知識も修めており、お薬の知識や診断の正確性が高い」ということの証明です。
ですので、どこか良い精神科クリニックにかかりたいと思った時は医者の取得資格をみて、
「精神保健指定医」と「精神科専門医」の両方を持っているかということで調べてみると、変な医者と当たる可能性が大きく減らせるというわけです。
もちろん、あくまで試験ですので、対策すれば取得できてしまう面もあり、100%の保証とは言えませんけどね。
まとめ
どうでしょうか。
精神保健指定医という資格の重要性と、僕ら精神科医がなぜここまで喜ぶのかご理解いただけましたでしょうか。
まあ色々言いましたが、結局のところ
合格してよかった〜‼️
ということに帰結しますね。
ただ、精神保健指定医は上にもあるように人権に大きく関わる医師という責任も同時に負う資格です
浮かれることなく、患者さんの人権に配慮しながら、今後も精神医療をしていこうとより一層邁進していく所存です。
今後ともよろしくお願いいたします。
ではまた。
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