
こんにちは、たつみです。
前回は認知症に早めに気付けるように、認知症の初期症状についてお伝えしました。
今回は「病院に来てから認知症と診断されるまで、どのようなことが行われるのか」についてお話ししようと思います。
というのも…

いつまで時間かかるんだ、早く帰りたいんだが



もう少しで検査終わりますので、もう少しだけお付き合いください
とか



え、まだそんなに時間かかるんですか、予定いれちゃってます。
どうしましょう?



どうしましょうと言われましても…
といったやりとりは、正直よくあります。
もちろん、「時間がかかるかもしれませんよ」と、事前にお伝えはしているのですが、
それでも、思った以上に時間がかかることが多いのが現実なんです。
ですので、今回はそんな“想定外”を防ぐために、
受診から診断までの流れと、どうして時間がかかるのかについてご説明していこうと思います。
何より、もともとどんな検査があるのかを知っておくことは、不安解消にもつながりますしね。
外来での診療の流れについて
認知症が疑われた場合、対応としては大きく分けて次の2つのパターンがあります。
- 外来で治療を進めていくパターン
- 初診からそのまま入院するパターン
今回は、より多くの方が経験するであろう、「外来で治療を進めていくパターン」についてお話ししていきます。
結論
こと受診の時間だけで言うのであれば、結論として
受診の時間帯(午前or午後)はまるまる空けておいて下さい
…とはいえこれだけじゃあんまりなので、実際に行う検査について今からご説明しますね。
認知症で行う検査の数々
認知症を疑う方の場合の検査はざっくり以下の4つです。
- 心理検査
- 画像検査
- 血液検査
- 問診



………少なくね?



確かにぱっと見そんな感じですね…
ただ、一つ一つに割と時間がかかるんです
というわけで、それぞれの検査で何するのか、これからご説明していきます。
心理検査
基本的にほとんどの方に行われるのが心理検査です。
とはいえ、明らかに認知症が進みきっている場合や、患者さんの拒否が強すぎてできない場合はやむなく省略される場合があります。
ただ、心理検査は行うのが基本です。
心理検査は、心理士さんが担当してくれます。
認知症の場合、ほとんどの患者さんで行われる検査が
- 長谷川式認知症改訂スケール(HDS-R)
- MMSE (Mini-Mental State Examination)
この2つです。他にも心理検査を追加することはあるのですが、
その場合はまた後日しましょうという場合が多いです。
これらは心理士さんが質問をして本人に答えてもらうと形式で行います。
これがかなり時間がかかります。
例えばHDSーRの場合
- 年齢
- 今日の日付
- 住んでいる地域
- 「桜、猫、電車」と覚えてもらう
- 心理士が行った3つないし4つの数字を心理士が言ったのと逆の順番で言ってもらう
- さっき覚えた3つの単語を思い出してもらう
- 100-7をしてもらって、さらにそこから7を引く
- 知っている野菜の名前を言ってもらう
などなどの質問があります。これが時間がかかります。
皆さんがから見れば簡単そうに思えるかもしれませんが、
認知症の方の場合はこれらの質問一つ一つに結構時間がかかります。
また、耳が遠くて説明に時間がかかったり、
検査の途中でイライラされて検査が進まなくなったりするなど、スムーズに進まないことも結構多いのです。
ただ、かなり熟達した心理士さんがいらっしゃると、ぱっと終わることもあります。



なに?どうやったらこんなスムーズに検査できるの?
と、僕ら精神科医も舌を巻くほどです。
画像検査
続いてご説明するのは画像検査です。大体認知症で行う画像検査は頭部CTか頭部MRIです。
画像検査も認知症の方の場合はほとんどの場合で行われますが、仮に受診したのが小さいクリニックであった場合はCTの機械などがないこともあるので、その場合は行われません。



CTとMRIってどう違うの?



ざっくりいうと、MRIはCTの強化版と思ってください
- CT
短時間で脳の大まかな状態を確認できます。
例えば、「脳出血がないか」「脳の萎縮がないか」など。
画像は5分〜10分くらいでとれます。 - MRI
もう少し詳しく脳の状態を見ることができます。
例えば、脳梗塞の跡や小さな血管の変化、海馬の萎縮など。
画像を撮るにに30分くらいかかりますし、その間、閉所の中でじっとしてなきゃいけないのがネックです。
上のような特徴があるため
- まずCTで大まかな異常を確認して、必要があればMRIを追加する
- はじめからMRIを行う
と2通りのやり方があります。どちらを選ぶかは、病院の設備や医師の判断によって異なります。
ただ認知症の場合は基本的には頭部CTのみで十分なことも多いです。
MRIは基本的に大きい病院にしかないため、CTしか取れないと言うこともありますけど。
頭部CTであれば数分で撮ることができるのもメリットですね。
まあ、あくまで画像を撮るだけであれば…の話ですが
これがどういうことかは、後ほどお話ししますね。
血液検査
血液検査、いわゆる採血ですね。これは認知症を調べるためというよりも
認知症のような症状を引き起こす別の原因がないか?
ということを調べるために行われます。内科の場合は採血すると大抵結果がでるまで待合で待つ必要がありますが、
認知症の場合は、その日は採血だけして、後日結果を説明するという流れが多いです。
そのため、採血自体はそれほど時間がかかりません。
問診
問診、いわゆる僕ら精神科医による診察ですね。
これにかかる時間は人それぞれですが、
本人の状態の評価や、ご家族からのお話しを伺う時間も含めて大体20分〜30分くらいになると思われます。
ただ、耳が遠い方や、より詳しく話を聞いた方が良い場合は、更に時間がかかることもあります。
安全第一!!
認知症の診察は、高齢の方が対象になることがほとんどです。
高齢者の診察で大事なことは「安全第一!!」これにつきます。
特に怖いのは検査室への移動の際の転倒、CTのベッドへ移乗するときの転倒…
そう、何よりも転倒が怖い。
「早く終わらせたい」「効率よく進めたい」と思ってしまうと、その空気は患者さんには伝わるものです。
それにより、患者さんが急ごうとしてこけそうになったり、イライラしてしまって問診や心理検査に時間がかかることもありえます。
また、急かすことで本来よりも悪い結果が出てしまうことも…。
「焦らず、急かさず、安全第一に確実に行う」
これが一番早く終わる方法なのです。
まとめ
今回は、認知症の初診時に行う検査と、
どうして診察に時間がかかるのかについてご説明しました。
僕たちも、時間がかかってしまって心苦しい気持ちはありますが、
最初にしっかり検査をすることで、むしろ今後の診察・治療がスムーズになります。
ですので、初診のときだけは「時間がかかるもの」と思って、
余裕をもってお越しいただけると嬉しいです。
ではまた。
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