精神科の治療の三本柱

こんにちは、たつみです。

今回お伝えしたいことは精神科の治療の三本柱です。タイトルのまんまですね。
精神科の治療について皆さんはどんなイメージがありますか?

「ひたすら患者さんの話を聞いてそう」「何でもかんでも薬だしてそう」「とりあえず診断書書いてよ」

こんなイメージではないでしょうか。

精神科の治療は基本的に3つの要素の組み合わせです。

  • 薬物療法
  • 心理療法・精神療法
  • 環境調整

この3つは病気の種類や病気の重症度によって、どれくらい重きを置くのかというのは違います。
個人的にはこの配分の判断こそが精神科医の腕の見せ所ではないかなと思います。
ここではそれぞれの治療法について簡単に説明しますね

各項目の詳しいことについてはいつか個別にまとまる予定なので、今回は簡単な説明だけにしておきます。

目次

薬物療法

薬物療法は、読んで字の如くお薬による治療です。
精神科治療の1番の基本は薬物療法です。(これをお伝えすると、多くの患者さんは嫌な表情をされますけど)基本的にはお薬を中心に治療を組み立てることになります。

結局薬?プロなら薬を使わずに良くしてみせろよ

そう言われると心苦しいんですけどね。

ですが、肺炎などのばい菌による感染症になった時、ばい菌をやっつけるための抗生物質を使いますよね。もしかしたら使わなくても自然治癒で治る可能性はもちろんありますが、それで治るかどうかはその人次第になります。

精神科のお薬も同じです。精神科の病気になる原因はわかっていない部分が多いのですが、基本的には脳の病気と言われています。薬を使わないで治療することは、個人的には「靴を履かずにフルマラソンを走る」ようなキツさがあると思います。

お薬はとっても大事です。精神科の病気が悪くなる1番の原因は「お薬を飲まなくなること」ですからね。
いずれはお薬に対してのイメージ改善のための記事を書きたいのですが、それはまたの機会にしましょう。

心理療法(精神療法)

心理療法は、「カウンセリング」とほぼ同じものと思ってもらって大丈夫です。心理療法の目的は
患者さんとお話しするなかで、「自分の考え方や自分の性格に気付く、自分を客観的に見れる」ということや、
「自分の考え方や行動のパターン」を変えるということがあります。

心理療法はさまざまな種類があります。よく行われるものの一部をご紹介します。

支持的カウンセリング
 悩みやつらさを安心して話せる場を提供することで、気持ちを整理し、自分なりの答えを見つけていくお手伝いをします。

認知行動療法(CBT)
 物の捉え方(認知)や行動のパターンに働きかけて、気分や生活を改善していく方法です。不安やうつ、強迫症状などに効果があることがわかっています。

精神分析的アプローチ
 無意識にある心の動きや過去の経験とのつながりを探ることで、今の悩みの背景を深く理解していく方法です。

対人関係療法(IPT)
 人との関係の中で感じるストレスや誤解に注目し、よりよい関係の築き方を学んでいくアプローチです。

ただ、心理療法はかなり専門性の高い治療です。支持的カウンセリングは基本的に一般的な精神科医は行うことができますが、認知行動療法、精神分析的アプローチ、対人関係療法などは専用のトレーニングを受けた医師やちゃんと知識のある医師が実施しないと、かえって患者さんの心に深い傷を負わせる可能性があります。なので心理療法は結構慎重にする必要があると僕は思います。

誤解を恐れずに言うのであれば、個人的には心理療法の方が薬物療法に比べてリスクの大きい治療方法と思います。

環境調整

精神科の治療には、「薬物療法」「心理療法(カウンセリング)」、そしてもうひとつ大切なものがあります。
それが 「環境調整」 です。あんまり聞き慣れない言葉ですよね。でもこのブログを見にいらっしゃる皆様なら、おそらくSNSでよく目にすると思います。

「職場を休職するために診断書を書いてもらった」「子供が放課後デイを利用している」
「認知症のお爺ちゃん、お婆ちゃんがグループホームに入所した」

これらは全部環境調整です。
簡単に言うならば「患者さんの置かれている生活や人間関係、仕事・学校などの“環境”を見直して、今の状態に合う環境に“調整”しよう」という考え方ですね。

環境を変えることもありますが、心の状態が落ち着いたら元の環境に戻すことも当然あります。
うつ病で休職していた方が復調したので復職するというのも環境調整です。

広い意味で言えば、精神科の患者さんが入院することも環境調整と言えますね。
今の心の状態を良くするために病院という治療に専念する環境に変えるというのも環境調整です。

精神科の病気は脳の病気であると同時に環境にも強く影響を受けるものなので環境調整もとっても大事です。
環境調整を主治医から提案された場合に、患者さんに覚えておいてほしいことは

環境を変えることは甘えではない

ただこれにつきます。治療上必要なことなんです。早く治すためには今の状態に合っている環境に身を置くことが大事なんです。これは仕事が好きとか嫌いとか甘えとか甘えじゃないとかの話ではないんです。
サウナ好きな方だってサウナの中に1日中いたら、脱水と熱中症で亡くなるでしょう。
水風呂という環境変化があるからまたサウナに入れるのです。

まあ僕あんまりサウナ入らないので詳しくは知らないんですが

まとめと注意

今回は、精神科の治療における大切な「3本柱」についてご紹介しました。少しでも参考になれば嬉しいです。

ひとつお伝えしたいのは、治療の組み合わせ(薬物療法・心理療法・環境調整)は、いつもご希望通りに進むとは限らないということです。

たとえば、お薬で十分に効果が出ている段階で、「もっと強い薬を出してほしい」と希望されることがあります。でも、その場合は薬を増やすことで体やお金の負担が増えるだけで、かえって良くならないこともあるんです。

私たち医療者も最善を尽くしていますが、治療に対して疑問や希望があれば、ぜひ遠慮なく伝えてください。納得できる形で一緒に治療を考えていけるのが一番大切だと思っています。

それでも納得がいかないときは、他の医療機関で相談してみる(セカンドオピニオン)という選択肢もあります。ご自身が安心して治療を受けられることを、なにより大切にしてほしいと思います。

ではまた。

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