うつ病治療の最後の関門〜先生、やる気が出ません〜

こんにちは、たつみです。

うつ病の治療について、これまでいくつかの記事を書きました。今回の記事でうつ病についての記事は一旦区切りとしたいと思います。

まだ他にも書きたいことはあるのですが、書き出すとキリがなくなってしまって他の病気について説明するのがいつになってしまうのかわからなくなってきたので、ここで一旦区切ることにしました。

さて、今回はうつ病治療における最後の関門についてお伝えします。
これまでの記事では

  • 治療のお話
  • 休養の必要性
  • 復職の際にどこに相談すればよいか
  • どのような調整を行うか

などについてお伝えしてきました。

もう復職の準備は万全です。

うつ病も完全に治ったわけではないにしても、入院はいりませんし、趣味を楽しめる余裕も少しずつ出てきた。
そんな状況です。

もう後は元の生活に戻るだけ

仕事をされていた方は職場復帰を、家事をされていた方はお家の家事を、あるいはその両方を、始める

これは理想的なうつ病の回復の流れになります。

ですが

ここで多くの方がつまずく最後の関門が待っています。

それが「やる気」です。

目次

うつ病のよくなる順番

  • うつ病の症状は大まかに
  • 不安
  • 意欲の低下
  • 喜びや生きがいを感じない

の3つに分けられます。

治療が進むと、まず「不安」が和らぎ、そこから「意欲」少しずつ戻り、最後に「喜び」や「生きがい」を感じられるようになる。

これは一般的な回復の順番です。

実際「意欲」「喜び・生きがい」の改善にはそこまで明確な順番はないことも多いですが、

「不安」が良くなってから「意欲や生きがい」を感じるようになる

という点は、ほぼ共通しています。

この意欲ーやる気ーこそが最後に残る厄介な症状です。

やる気は待っても出てこない

ご飯も睡眠もまあまあ良いです。
時々不安があるんですけど、それも耐えることが出来ています。
でも何するにしてもやる気があまり起きません。

これはよく外来で職場復帰を控えた患者さんに言われることです。

これこそがうつ病治療の最後の壁なのです。

誤解を恐れずに言えば、正直にいうとうつ病は比較的治りやすい病気です。

重度の時の自殺さえ乗り越えられれば、治療を続けることで多くの場合症状は軽くなります

しかし、「軽快する」=「完全に元に戻る」わけではありません。

うつ病の症状を

  • 0(元気な状態)
  • 10(重いうつ病)

とした場合、

8〜10だった症状が、治療により2〜4くらいに改善することはそこまで難しいことではありません。
(勿論個人差はありますし、うつ病が軽い病気、簡単な病気というわけではありません。)

ですが、2〜4の症状を0にすることはかなり難しい

完全に0に持っていくことが出来たという方は自分も、周りの先生方の患者さんをみてもそこまで多くはいません。

やる気が出ないとき、どうするか?

じゃあやる気が出ない時にどうするのか、自分は外来ではこのようにしています。

やる気がでないんですが

たつみ

やる気はなかなか難しいところです。
ただ、やる気は待っても出てきません。
まずやってみましょう。

これは僕が外来でよくお伝えすることです。「いや、厳しっ‼️」と思われましたか?
ですが、「まずやること」これこそが最も大切なのです。

そもそもとして「やる気は好きなこと以外には基本生まれにくいもの」です。

皆さんが仕事に行く時、

今日はやる気満々だ‼️

と毎回思って出勤しているでしょうか?

多くの方は

  • 仕事を行かないといけないという義務感
  • 習慣だから

という理由で出勤しているはずです。

たまに「仕事が大好き!」という方も中にはいますが、現実にはそう多くありません。

少なくとも自分が今まで見てきたうつ病の患者さんではほとんどいませんでした。

だからこそ、やる気を待っても元の生活には戻れないのです。

どのように再開するかを調整したら、あとはやってみる、これが大事です。

やる気に関しての勘違い

やる気というものに関して皆さんはどういうものだと思われますか?

行動の原動力でしょ。やる気がないと何にもできないよ

そう、これこそが勘違いです。

やる気があるから行動できる

多くの方がこう考えていますが、実際は逆です。

やる気とは

行動の後に生まれる、追い風のようなもの

なのです。

テスト前、現実逃避として部屋の掃除をしたことはありませんか?
最初は机の上をちょっと片付けるくらいのつもりだったのに、気がつけば部屋全体を大掃除していた。

そんな経験はありませんか?

これはどうしてでしょう。この大掃除は当初予定していたものではなかった筈です。テストからの現実逃避としてちょっとした掃除をするだけのつもりだったのですから。

これこそが、やる気が後から生まれた例です。

だからこそ大切なことは「まずやること」なのです。

自分もこのブログの記事を書くとき、最初は「タイトルや最初の文章だけでも考えよう」とパソコンを開きますが、いざ始めて見ると最後まで書き上げています。

ご家族・周囲の方へのお願い

行動を起こすことの重要性をお伝えしましたが、ここでご家族や周囲の方にお願いがあります。

それは、
ご家族から本人に圧をかけないでほしい」
ということです。

やる気が出ない本人に対して、「動け」「やりなさい」とご家族がプレッシャーをかけてしまうと、
自宅でもリラックスできず、かえってうつ病が悪化してしまうことがあります。

本人に行動を促すことは、主治医にお任せください。
ご本人とご家族が無理に対立する必要はないのです。

(もちろん、状況によっては「お尻をたたく」ことが必要な場合もありますが、その時は主治医からご家族様にお伝えさせていただきます。)

まとめ

いかがだったでしょうか?

今回お伝えしたのは、うつ病回復の最後の関門「やる気」についてでした。

  • やる気は待っても出てこない
  • 行動すれば、後からやる気がついてくる
  • 無理のない範囲で、まず一歩を踏み出すこと

この3点だけでも、覚えていただければうれしいです。

もちろん、無理は禁物です。
焦らず、少しずつ、歩みを進めていきましょうね。

では、また。

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