
こんにちは、たつみです。
前回「復職と退職どっちがいいの?〜よくある疑問にお答えします〜」で復職についての僕個人の考えをお話ししました。
いざ復職することが決まった時に、「仕事を今までと同じようにできるかな?」「最初は少ない業務量や、時短勤務からしたいけど誰に言ったらいいんだろう?」というお悩みを言われることがよくあります。
今回は、そんなお悩みにお応えする形で「精神科医」と「産業医」、それぞれの役割や違いについてお話しできればと思います。
そもそも産業医とは?
産業医は、職場にかかわる医師です。
役割としては、「会社の従業員の健康管理や職場環境の改善をサポートする」ことです。
具体的な仕事としては
- 健康診断のチェックや面談
- 職場環境の設定
- 長時間労働者への面談
- ストレスチェック後の対応
- 復職に際しての面談
になります(あくまで一例です)。

うちの会社産業医いたかな?



たしかに全ての会社に産業医がいる訳ではありません。
従業員が50人以上いる場合、会社には産業医の設置義務があります。ただし産業医は常に会社にいるわけではありません、大体は月1回職場を訪問して何かあれば対応するみたいな感じになることが多いですね。これを「嘱託産業医」といいます。
従業員が1000人以上の大会社になってくると、「専任産業医」といって、その職場専用の産業医として常にその職場にいることが義務付けられています。
産業医の仕事の変化
もともと産業医は、工場などでの作業による身体的な健康被害(騒音・粉塵・有害物質など)を防ぐ目的で配置されていました。つまり、以前は「ケガや体の病気を防ぐ」ということがメインの目的でした。
ですが時代の流れとともに、働き方も多様化したこと、職場の安全な環境づくりはある程度徹底されたため、最近は「メンタルヘルス」や「職場のストレス」が重要なテーマになってきました。
2000年代以降、特に過労死問題やうつ病による休職の増加を背景に、産業医にもこころの健康に関わる役割が強く求められるようになりました。
- ストレスチェック後の面談
- メンタル不調者への対応
- ハラスメントや職場環境の相談
これらの業務は最近増えてきましたね。
実際ベテランの産業医の先生とお話しすると、「相談内容の変化についていくのが大変だ」というお話をよく聞きます。
よくある勘違い



え、職場に産業医いるの?
じゃあ普段クリニックで出してもらってる血圧の薬を貰おうかな〜



残念ながらそれはできないんですよね。
産業医は基本的に処方や病気の診断はできません。
基本的に産業医の役割は「治療」じゃなくて「予防」です。基本的にお薬を出したり、「あなたは〇〇病です」といった診断業務はできません。
- 産業医が事業場内に設けられた「診療所」の医師も兼ねている
- 急病・救急的な対応が必要な場合の一時的な対応
上のような場合には、処方や治療行為が可能な場合もあります。
改めて、産業医の先生の業務を簡単に説明すると、
- 職場の環境を整えて、ケガや病気になる人を減らす
- 病気になった人に早期に気づいて、病院への受診に繋げる
- 病気から回復した人の、再発対策をする。
になります。
精神科医の仕事は?
精神科医の仕事は今まで説明したように、患者さんの病気の治療になります。
ここで大事なことは、僕らの仕事は「目の前の患者さんを対象にする」ということです。
たまに職場の方がいらっしゃったりして、復職前に主治医と話し合いの場を設けることがありますが、基本的に職場の業務の調整等はできません。(ご提案することはありますけどね)
じゃあ、どっちに相談したらいいの?



産業医と精神科医、結局どっちに相談したらいいの?



ざっくりとした分け方にはなりますが、
以下のように考えるとよいかもしれません。
精神科医に相談した方がいいケース
- 「病気かもしれない」と思っているとき
- 休職や復職について、主治医の意見書が必要なとき
- お薬や治療の相談をしたいとき
→「今の自分の状態を知りたい」「治療が必要かも」と思ったら、精神科医が適しています。
産業医に相談した方がいいケース
- 復職に向けて職場環境の調整が必要なとき
- 勤務時間や仕事内容に関する配慮をお願いしたいとき
- 上司や人事に伝えるべきことを誰かに仲介してもらいたいとき
- ハラスメントや職場の人間関係のことで悩んでいるとき
→「職場環境の整備」や、「働き続けられるための工夫」をしたい場合には、産業医の力が頼りになります。
正直どっちでも大丈夫です
ここまで書いておいてなんですけど、
本当に大事なことは
産業医であれ、精神科医であれ、医療につながること
です。
もし最初に相談した相手が違ったとしても、適した方に紹介をして最終的には適した場所につながります。
精神科でも産業医でも、相談さえしてくれれば、僕ら医師の方で橋渡しはできるのです。
「困っていることを言葉にして、医療につながること」
これさえできれば、あとはどうとでもなるのです。
まとめ
いかがだったでしょうか?
今回は復職だけでなく仕事全般におけるテーマになりましたが、「復職ってどうすればいいの?」「誰に相談すればいいの?」と悩む方にとって、お役に立てる内容であれば嬉しいです。
1人で悩まず、ぜひ相談してください。
では、また。
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