復職と退職どっちがいいの?〜よくある疑問にお答えします〜

こんにちは、たつみです。これまでこのブログでは、うつ病についての記事を書いてきました。
うつ病の症状や治療、休養の大切さをお伝えしました。

今回は「うつ病が良くなってきた後」のお話です。精神科での治療のゴールのひとつは、やはり「元の生活に戻ること」。その中でも多くの方にとって大きなテーマとなるのが「職場復帰」か「退職」か、という選択です。

厳密にはこれはうつ病だけの話ではないのですが、特にうつ病の場合、職場のストレスが大きな要因になっていることが多いため、この選択には悩みがつきものです。

この記事がそのお悩み解決のお力になれば幸いです。

目次

やっぱり職場に復帰した方がいいの?

元の生活に戻るって言うけど、仕事やめるのはいけないの?
それってひどくない?

たつみ

おそらく自分だけでなく、多くの精神科医は基本的には職場への復帰で考えるかなと思います。
やめることが必ずしもプラスになる保証がないからです。

他にも理由があるのですが、僕は基本的にいくつかの理由から復職を勧めています。

  1. そもそも職場のストレス自体がうつ病によるものであった可能性があるので、
    うつ病の治療が開始された後であれば職場のストレスを感じにくい可能性があること
  2. 復職せずに退職してしまうと、その経験が失敗経験として刻まれてしまう可能性があり
    再就職への不安が生まれる可能性があること
  3. 転職の方が復職よりハードルが高いこと、転職先が良い環境である保証はないこと
  4. 復職時に仕事量の調整などの配慮をしてくれることがあること
  5. やめるのはいつでも出来ること逆に一度やめたら元にはもどれないこと

……多いわ‼️復職復職うるせえわ‼️

たつみ

すいません。でも全部大事なことなんですよ。
この中で自分が特に重視しているのは2番と5番です。
一つずつご説明していきますね。

1.「職場のストレス=うつ病のせい」だったかもしれません

1番にあるように、休職前は職場に対してのストレスがかなり強い状態です。「職場に申し訳ない」という考え方もいれば、「訳のわからない業務を押し付けられた」というきっかけに対して強い不満を抱えている方も居て、状況は千差万別です。

ですが休養の記事の際にもお伝えしたように、うつ病になってから受診までにはかなりタイムラグがあります。
「仕事しんどい……、ミスも多い」という職場でのストレスも、実はうつ病の影響で過剰に感じていた可能性があります。

うつ病が良くなった後いざ復職してみると、「あれ?前ほどつらくないかも」と感じられることも。
案外やってみるとすんなりと復職される方も少なくないですよ。

2.復職は一度はしてほしい

2番目が僕がかなり重視していることです。うつ病の治療後を終えた後も、休職前の自分や職場を思い出して、「やっていけないかも…」という不安から退職という道を選んでしまった場合、その経験が「失敗体験」になってしまう方もいらっしゃいます。

そのような方の場合、いざ復職しようとしても

前の仕事はうつ病でやめちゃった。
主治医の先生は仕事できるよって言うけど
やってダメだったらどうしよう。

となることが多くて、転職にもなかなか踏み出せないというケースも多いです。

結果辞めても良いので、復職は一度することをお勧めします。一度でも復職したということが、今後大きな自信になるのです。

3.転職の方が労力はかかる。良い場所かどうかは入ってみてしかわからない

転職というのは環境を変えるチャンスなのは事実です。職場が明らかにおかしいというケースもありますからね。

ですが転職となると
履歴書作成、面接、全く新しい人間関係、新しい仕事内容……
それなりのエネルギーを必要です。

しかも、その新しい職場が自分に合っているかどうかは、実際に働いてみないとわかりません。
これはなかなか大きなリスクでもあります。

4.復職時には配慮してもらえることがある

復職の際には、主治医の診断書や産業医との面談などを通して、仕事の負荷を減らしてもらえることが多いです。

・短時間勤務から始める
・残業なしの配慮
・業務内容の調整

など、段階的に職場復帰できるような環境が整いやすいのです。
これは、転職ではなかなか得られない大きなメリットです。

5.やめるのはいつでも出来る

長々と書いてきましたが、結局ここが一番大事かなあと思います。

僕が患者さんに今後の方針をご相談する時に、最も重視していることは「選択肢が多く残る方法から提案する」というものです。(もちろん最終決定権は患者さんにありますよ。)

退職した場合、復職はよっぽどじゃないと出来ません。
ですが、復職してみて「やっぱり合わないね」と思えば、その時に退職することはできますよね。

「仕事を辞めるな」ということじゃない

患者さん

結局、仕事を辞めるなってことですか?

たつみ

違います
しっかりと自分で考えてリスクも理解した上で判断しましょう
ということです。
「ちゃんと考えて、悩んで、それでもやっぱり辞めよう」と決めたなら
僕らは心から応援します。

僕らがなぜここまで復職を勧めているのか、正直に言うと僕らも怖いからです。
僕らが患者さんに出来ることは限られていて、病気の治療や、福祉の形でしか患者さんに支援は出来ません。

患者さんに仕事を斡旋することはできないのです。

安易に仕事をやめるように勧めて、その結果患者さんが困った時に僕らは責任が取れません

だからこそ、無責任なご提案はできないのです。

大切なことは自分でしっかりと考えて自分で決めること

カウンセラーの中には逆に
「合わない職場はすぐに辞めて新しい環境にいけばいいじゃないか。その環境が合わなければ、また同じことをすればいいさ」というスタンスの方もいらっしゃいます。

これに対しては個人的には思うところがありますが、別に否定するつもりはありません。
どんな形であれ相談者の方にとってプラスの方向になるのであれば、復職だろうが、退職だろうが些細な問題です。

ただ、忘れてはいけないのは、「あなたの意見を応援する人もあなたの人生の責任は取れない」ということです。

僕の発言やカウンセラーの発言をみて、どの意見を取り入れて、どの判断を下すのかはあなたの責任になります。

厳しく聞こえるかもしれませんが、僕は精神科医として、その現実をたくさん見てきました。

ですが、大丈夫です。うつ病は改善し、自分で判断できる力は戻ってきたのですから。

もしまたうつ病が悪化してその能力を失ったのならば、また治療をすればよいのです。

まとめ

僕が復職を勧める理由、いかがだったでしょうか。きっとそれぞれ思うところがあるでしょう。

最終的な答えは人それぞれですし、正解は正味ありません。
この記事を読んで、「自分はどうするかな?」と考えるきっかけになってくれたなら、とても嬉しく思います。

ではまた。

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