うつ病の休養は休暇じゃない!家でゆっくりしなさい!

こんにちは、たつみです。

あらかじめ謝罪申し上げます。今回のタイトルを見て気分を害された方、怒られたと思われた方、僕に一切侮蔑の意図はありません。ただこれは日常診療をしているなかで結構よくあることなので今回取り上げさせていただきました。
どちらかというと今回の記事は患者さんじゃなくてご家族様に向けた記事になります。

前回の記事「うつ病の治療ってどんな感じ?〜薬・休養・心理療法についてやさしく解説〜」のなかで、うつ病でまず大事なことは休養であるとお伝えしました。休養することでまずはMPを回復させようという話をしましたね。

ここで大事なことは、僕らが進めているのは「休暇」ではなく「休養」です。

何がちがうの?

たつみ

個人的にはこの2つは明確に違います。

目次

休養と休暇、どう違うのか

「休養」と「休暇」はこんなふうに自分はとらえていますし患者さんには下の説明をしています。

休養:心や体の疲れを回復させるために、何もせずゆっくり過ごすこと。
休暇:学校や仕事などを休んで、自由に過ごせる期間のこと。
(筆者による整理/広辞苑の定義をもとにわかりやすく言い換えています)

ではこの違いが、どう治療に影響していくのでしょうか?

うつ病の場合、「入院するほどではないから外来で様子を見れそう」という場合や、「入院は嫌です」と本人や家族に断られた場合、治療としてお薬の処方と休養するようにお伝えします。

具体的には「ご自宅でゆっくりしましょう。家事も極力しないでお家で心と体の疲労を取りましょう。」とお伝えします。そして次の受診は大体1週間後か2週間後になります。

2週間後の外来にて

たつみ

2週間経ちましたが、ゆっくりできましたか?不安なお気持ちは減りましたか?

患者さん

あまり…変わらないです

たつみ

え、なんで⁉️
全然よくなってない。むしろ前回よりも悪いかもしれない。

たつみ

お薬が合わなくて飲めなかったりしましたか?
この2週間、ゆっくり過ごせましたか?

彼氏or旦那さん

先生、全然よくなってないんですけど。
折角ディズ◯ーランドに連れていったのに

たつみ

あ?💢。

 これねえ、実際あるあるなんですよ。ここでタイトルにもどりますが

「休養」は何もしないでゆっくりすることです! 遊びに行くことじゃありません

ではなぜ、遊びに行くべきじゃないのか。その理由と、それでも何故家族はレジャーに連れて行くのか?を個人的な考えを交えて、患者さん目線、ご家族様目線でご説明します。

何故、遊びに行くべきではないのか?

何故遊びにいくべきではないのか、それは簡単な話で「行っても楽しめないし、より疲れるだけだから」です。
気付いてほしいうつ病のサイン〜うつの症状と雰囲気を知ろう〜」という記事でもご説明しましたが、

うつ病の症状の中には「興味や喜びの喪失」という症状があります。これは簡単にいうと「好きだったもの、楽しかったことが以前と同じように楽しめない」ということです。

うつ病という病気のせいで、好きだったディ◯ニーランドも全く楽しめないんですよ。
ですが、楽しかった頃の自分は覚えているのです

自分が同じ立場だった時にどんな気持ちになるでしょうか。

患者さん

あれだけ好きだったディ◯ニーランド。年に一度いけるかどうかなのに、全く楽しくない。何も嬉しくない。
なのに周りの人たちは心から楽しそう。楽しめない私がおかしいんだ。
家族も私が喜ぶと思ってわざわざ連れてきてくれたのに楽しめないのが申し訳ない。

皆さんがここまで思われるわけではありませんが、同じようなことを言われる方はいらっしゃいます。周りが盛り上がっている中で自分だけ楽しめないという疎外感を、皆さんも感じられたことはありませんか?僕はあります。

最後に簡単にまとめると、うつ病の方が自宅でゆっくり休むことを勧めているのは、

レジャーを楽しむことはできないし、行くことで更にうつ病が悪化する可能性があるからです。

何故、ご家族は患者さんを遊びに連れて行くのか?

ちなみに、これは別にうつ病だけではありません、統合失調症でも同じようなことは起こります。

関係性も今回は彼氏さんという設定ですが、お母さんが病気になった息子さんを遊園地に連れて行くなど色んな関係性で起こっていることです。

何故ご家族、あるいは恋人は、休むようにと言われた患者さんを遊びに連れて行くのでしょうか?
まあ明確な答えはないんですが、おそらく申し訳なさからくるものと僕は思っています。

うつ病の重症度による違いを前の記事で書きましたが、うつ病が診断されるまでには時間がかかります。
風邪のように、「昨日までは元気だったけど、朝起きたら熱や咳がでて…」みたいな感じではありません。

何がいいたいかというと、患者さんには「うつ病なんだけど、診断を受けていないから誰もうつ病と気づいていない」という時期がまあまあ長い時間あるのです。

この時間のずれこそがこの問題の根っこであると自分は思います。

ではこのずれの間になにが起こるのか、それを推測混じりではありますが解説しましょう。

仮に受診するまでの期間を4週間とした時に、おそらくこんなやりとりをされているはずです。

1週目〜2週目

患者さん

はあ〜、なんだか体がだるい、どうしたんだろう。
眠りも浅くてきついよ。

彼氏or旦那さん

大丈夫?ゆっくりした方がいいんじゃない?

家族や恋人やご友人等、身近な方が不調になった時、やっぱり人はまず心配すると思います。
ですが当然うつ病は病気であるので、優しい声掛けというものは治療の助けにはなりますが、それで治るということは
残念ながらありません。

大体がうつ病は良くならずにこのまま気分は落ち込んだまま時間が経過していきます。

ではこのまま経過したらどうなるのでしょうか?

3週目〜4週目

患者さん

もうどうしようもない、ずっと何が起こるか不安で落ち着かないよ
全く眠れないし、涙も止まらない

彼氏or旦那さん

あのさあ、いつまでそんなにうじうじしてるの?
何が原因かしらないけど立ち直ったら?

うつ病は何度もお伝えしたように頭が働かなくなる病気です。普段の何気ない会話への応答の鈍さ、そして話す内容は悲観的になりがちで、なおかつテンションも低いという状況が続きます。

うつ病という病気だということをわかっていれば、仕方のないことと理解されます。
ですがそうじゃない場合

「自分の話はつまらないというのか」
「いつまでそんなに暗いままなんだ」
「みんな辛いことはあるんだよ、自分だってそうなのに」
「もっとはきはきしなよ」

と周りの人が思うことは残念ながら往々にしてあるのです。
その思いが態度として出てしまい、つい冷たい言葉を吐いてしまうことがあるのです。

では、次は受診の後の流れを見てみましょう。

受診〜受診後

たつみ

うつ病です。

患者さん

やっぱりそうなんですか。

彼氏or旦那さん

え、うつ病だったの⁉️やばい、ひどいこと言っちゃった。

ついきついことを言ってしまった。あるいは内心酷いことを思ってしまっていた。でも実は病気の症状だった。
そう知った時、人は罪悪感を抱いてしまうものです。悪い人でなければ尚のこと、良心の呵責に耐えられませんよね。

では受診が終わり、主治医から休養を言われたらどうなるのか?

彼氏or旦那さん

なんとか挽回しなくちゃいけない
そうだ、前好きだったディズニ◯ランドに連れていこう‼️

実際には「挽回したい!」と強く意識しているわけではなく、どこかで「何かしてあげなきゃ…」という気持ちがふわっと湧いてくるような感覚かもしれません。
大切な人を図らずも傷つけてしまった場合、人はどうしてもそのマイナスを挽回したいと思うものです。

ですが、ここはあえて少し厳しくいうのですが、休養中にディズニ◯ランドに連れて行くことは「患者さんのため」ではありません。それは「患者さんを傷つけてしまったあなたのため」なのです。

ただお気持ちはとてもよくわかりますし、挽回しようと思うのはむしろ自身を振り返れる優しい方だなと自分は思います。この場では偉そうに書いていますが、もし自分が精神科医でなければ、きっと同じようなことをしてしまうと思います。

うつ病の人は遊びにいっちゃいけないの?

うつ病の人は遊びに行くなってのかよ
それは差別じゃねえのかよ‼️

たつみ

そんなことはありません。むしろ患者さんが好きなことを楽しめるようになるということは精神科医冥利につきます。

上といってること違うじゃん

これは別に嘘をついているわけではなくて、
うつ病が良くなってからなら、遊びに行くのは大歓迎ということです。

うつ病が良くなってくると好きだったことがまた楽しめるようになります。
仮に休職中であった場合、仕事に行くのはまだ難しいけれど、趣味を楽しめるほどには回復してきたという時がやってきます。

そうなったら是非復職前に遊びにいってください。ディズニ◯ランドだろうが、U◯Jだろうが、ひらかたパ◯クだろうが、どこでもお好きな場所に遊びにいってください。

病気が良くなって趣味が楽しめるようになったこと、実際に楽しめたこと、そしてその時間をご家族や恋人とすごせたということは患者さんの心の支えになると自分は思います。

ただし、行くタイミングは必ず主治医と相談してくださいね。

まとめ

いかがだったでしょうか、少しきついタイトルであり不快に思われた方もいるかもしれません。大変申し訳ありません。

ですが折角遊びに行くならば、誰もが楽しめる状況で行ってもらいたいなと思います。お金も勿体ないですしね。

ではまた。

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