精神科の入院について〜その②:強制入院への誤解〜

こんにちは、たつみです。今回は精神科への入院についてのその②です。

今回お話したい内容は「強制入院への誤解を解きたい」というものです。皆さんはニュースをみて、「精神科医は患者を無理矢理入院させている」と思われるかもしれません。

ですが、そもそもこれが大きな誤解です。結論から言いますと精神科医の独断で患者を入院させることはできません

強制入院を取り扱うには厚労省指定の精神保健指定医という資格が必要ですが、この資格を持ってしても、医者の独断で患者を入院させることはできないのです。

精神科医にできることは

「患者の病状を適切に評価し、入院治療が必要な状態であること、現在本人の正常な判断能力が損なわれていること」という判断で、精神科医が勝手に誰の同意もなく強制的に入院させることはできません。

じゃあ医療保護入院、措置入院って誰が入院させているの?
本人は同意していないのよね?

そう、その部分がとても大事です。医療保護入院、措置入院はあくまで本人の同意を得ていないと言うだけで、本人の家族、あるいは自治体の長(県知事、市長、町長)に同意を得て入院しています。

実際の入院のやり取りを見てみましょう。

うつ病の方が医療保護入院となる時のやりとりはこんな感じになります。

たつみ

重度のうつ状態であり、自殺のリスクや強い不安に苛まれている状況です。このまま家で見るのは病状を考えるとリスクが大きすぎます。
入院が必要と思われますがいかがですか?
(病状の評価と入院の必要性の説明)

患者さん

入院した方がいいんでしょうか・・・。自分ではわかりません・・・。
(お返事があればいい方で、重度のうつ病の方では返答すらないことも多いです。)

たつみ

今は病状が重くて、ご本人で判断するのは難しい状況と思われますので、治療して、状態が改善するまでは、普段の本人を知るご家族様の同意で入院をさせていただければと思います。

ご家族

このままだと何か起きないかと心配です。家では見れないと思いますので入院をお願いします。

たつみ

わかりました。では一旦はご家族が同意による医療保護入院という形で入院とさせていただきます。本人の状態が改善し、治療方針を一緒に考えられる状況になりましたら、入院は本人同意の任意入院にさせていただきますね

実際には細々とした、書類の説明や同意書類の記載等もあるのですが、基本は上記のやり取りです。我々精神科医は入院の必要性に関しては判断できるのですが、入院するかどうかの直接的な決定権はないのです。

ちなみに、ご家族が入院に同意をされなかった場合は入院できません。また、家族が入院を希望していても、医者がその必要性を感じていなければ医療保護入院はできません。

  1. 医者が入院が必要な病状であると判断すること
  2. 患者本人が入院するかどうかを判断できる精神状態でないこと
  3. 家族が入院に同意していること

この3つが揃った時に医療保護入院は成立します。

ちなみにこの医療保護入院は一時的とはいえ、本人の同意なしでの入院となりますので、適切な運用をしていないと人権侵害の恐れがあります。そのため、運用には法律で厳しく制限されていますし、医療保護入院の導入ができるのは、精神保健指定医という国から認められた医者のみです。

いかがでしょうか。医者の独断で患者さんを無理やり入院させているというわけではないんだなというのを知ってもらえたら大変ありがたいです。これを機に精神科の入院について多少誤解が解けましたら幸いです。

お付き合いいただきありがとうございました。

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