知ってほしい精神科の入院の種類〜精神科は強制入院させるんでしょ?〜

こんにちは、たつみです。今回は精神科の入院について簡単なご説明をしたいと思います。

昨今ニュースでよく精神科病院に関しての報道がありますよね。残念ながらよくない意味で。

まあ実際報道に挙げられた病院が悪いというのは大前提ですが、その報道だけを鵜呑みにして

精神科病院は虐待施設だ‼️
人権もクソもあったもんじゃない‼️
入ったら最後退院できなくなるぞ‼️

みたいな誤解が広まってしまうと、本来なら早期に治療すれば問題なく退院できる方が、治療につながらずに症状が悪化してしまうという悲劇に繋がります。

なので今回の記事では精神科の入院について比較的わかりやすくご説明しようと思います。

目次

精神科の入院の形式

精神科には大きく分けて3種類の入院の方法があります。名前は任意入院医療保護入院措置入院の3つですね。

この3つを更にわけると、「任意入院」と「医療保護入院・措置入院」の2つに分けられるかなと思います。

何を基準に分けられるのか、それは「本人が入院治療に同意しているか」というものです。

より一般的にわかりやすくいうならば「強制入院かどうか」ということです。(ただこれはかなり暴力的な表現です。強制入院という言葉も精神科医療者とそれ以外の方で受けるイメージが異なるのですがわかりやすくするために使っています。次の記事で具体的にご説明します。)

まずは一般的な入院である任意入院をご説明しますね。

任意入院とは

任意入院は、基本となる入院の形態です。簡単に言えば「患者さん本人が入院に同意している入院」という形になります。

入院治療というものは、「医療者が入院の必要性を患者に説明し、患者本人が入院に同意して入院する」ことが原則です。簡単に言えば、

たつみ

入院での治療が必要です。入院しましょう。

はい、お願いします。

これが基本の入院の流れになります。内科や外科、精神科以外の科の入院は基本的にこの形式です。というか他の科はこれ以外の入院の仕方はないので、わざわざ任意入院という言葉は使いません。

ただ精神科の場合は他の入院の仕方があるので、違いがわかるように任意入院といいます。

当たり前のことですが、患者さんが入院治療を望まない場合は入院はできません

よく話題になりますが、大物芸能人、大会社の社長などが癌になった際に、保険治療、入院治療はせずに民間療法に頼って、適切な医療を受けずに亡くなってしまうということもあります。これに対して「周りはなんで本人を入院させなかったんだ!」「医者はなんで入院させなかったんだ!」というお叱りの言葉をおっしゃる方もいますが、これは仕方がないことなのです。

基本的に人は法律に反しない限り、自身のことを自身で決める権利があります。その権利を他者が奪うことはできないのです。患者さんが治療や入院を望まない限りは、決して僕らが無理やり治療することはできません。

医療保護入院、措置入院はどうなの?

おいおい待て!
精神科病院には強制入院が蔓延ってるってTVの特集で見たぞ!!

たつみ

蔓延っているというのは置いといて、確かに精神科には患者さんご本人が同意していなくても入院するパターンはあります。

なぜ精神科ではそのようなことが許されているのか

それは・・・、「精神科の病気になると、本人本来の判断ができなくなるから」です。これは精神科の病気の怖さとはという記事でも同様のことをお伝えしましたね。

人は自身のことを自身で決める権利があります。ですが病気が重篤な場合は、病気のせいで本来の判断ができなくなってしまう。すなわち、その権利が病気のせいで行使できない状態です。

そのため僕ら精神科は、「一旦は周りの方に同意を得て、入院をしてもらい、治療をして本人本来の判断ができる状態にまで戻しましょう」という目的のもと入院をしてもらっています。

医療保護入院と措置入院の違いは、「だれから入院の同意を得ているか?」という点で異なります。

またこれは、本人の意向を一時的に無視して入院をしている形になるので、人権侵害という懸念があるため運用は慎重にする必要があります。

ですので、これらの入院は全ての精神科医ができるわけではありません。国の認可を受けている「精神保健指定医」という資格をもつ医師のみができます

医療保護入院とは?

医療保護入院は「本人の代わりにご家族の同意で入院する」入院の形式です。

例えばうつ病で死にたい気持ちがあるとき、認知症で自宅では生活できないとき、家で治療をするのはかなり危ない、入院が必要だけど本人からは同意が得られない

こんな時にご家族にご説明して、ご家族の同意で入院する形が医療保護入院です。

たつみ

このままだと、自殺のリスクもありますし入院が必要です。

………

たつみ

今は病状が重くて、ご本人で判断するのは難しい状況と思われますので、治療して、状態が改善するまでは、普段の本人を知るご家族様の同意で入院をさせていただければと思います。

このままだと何か起きないかと心配です。家では見れないと思いますので入院をお願いします。

たつみ

わかりました。では一旦はご家族が同意による医療保護入院という形で入院とさせていただきます。本人の状態が改善し、治療方針を一緒に考えられる状況になりましたら、入院は本人同意の任意入院にさせていただきますね

実際には細々とした、書類の説明や同意書類の記載等もあるのですが、基本は上記のやり取りです。

ちなみにご家族が入院に同意されなかった場合は入院はできません

医療保護入院した人は退院するまでずっと医療保護入院なの?

たつみ

そんなことはありません。

入院治療の結果、本人の判断能力が戻った場合、改めて入院治療の必要性をご説明します。

その際、本人が治療に同意すれば任意入院に切り替わりますし、同意しなければそのまま退院となります。

ちなみに、ご家族が入院を希望したとしても、精神科医がその必要性を感じていなければ医療保護入院はできません。

医療保護入院には

  1. 家族が入院に同意していること
  2. 医者が入院が必要な病状であると判断すること
  3. 患者本人が入院するかどうかを判断できる精神状態でないこと

この3つが揃っていなければできません。

措置入院とは?

措置入院は、「行政(県知事)の指示で行われる入院治療」です。

え、急に行政が出てきた‼️とびっくりされましたが、当たり前ですがこれはかなり限定的な状況です。

どのような時にはわざわざ行政が出てきてくるのか、それは…

精神症状のために、自傷他害の恐れがあるとき

です。

「自傷他害」とは読んで字の如く、「自分を傷つける、他人に害する」ということです。

激しい統合失調症や双極性障害の方は、その精神症状のために人を傷つけることがあります。

例としては、突如街中でナイフを振り回したりしている方が時折報道でありますよね。
(大前提として、ああいう人たちが皆、精神症状によるものではありません。)

その方が仮に精神症状によるものであった場合、治療をすることで他害のリスクを減らせます。

このような時に行われるのが措置入院です。

ちなみにこれは、行政が同意者となって入院することは確定しているので

家族や本人が拒否しても入院は行われます

治療の結果、自傷他害のおそれはなくなったと主治医が判断し、そして行政でもその確認が取れた場合に

措置入院は解除されます。

よくある勘違い

どうでしょうか、この医療保護入院、措置入院のイメージは出来ましたか?

この説明を読んでお気付きのことはないでしょうか?

あれ?精神科の先生の一存で勝手に入院は決められないの?

たつみ

その通りです‼️
基本的に僕らの一存のみで患者さんを入院させることはできません‼️

僕らができることは我々精神科医は入院の必要性に関しては判断できるのですが、入院するかどうかの直接的な決定権はないのです。

誰かが入院している場合には絶対にだれか同意している人がいるのです。

だれの同意も得ずに入院をすることはありません。

じゃあ報道の病院はなんなの?

とはいえ、家族と結託して、入院させる病院というのも残念ながら無いわけではありません。

あるいは入院中ご家族の目が届かないのを言いことに好き放題している病院も残念ながらゼロではありません。

だいたいテレビの報道で問題になるのはこの手の病院です。

もし仮にそのような事態になったときにどうしたらよいのか…

対処法はあります。

入院中の患者さんがご自身の待遇に不満があったときは、県の相談窓口があります。そこに電話をすると、本当に入院が必要なのかという外部の機関からの監査が行われます。

その際入院が不要と判断されれば退院となります。

まとめ

いかがだったでしょうか。

精神科の入院の違いについてご説明させていただきました。

とはいえ、やはり精神科の入院には怖いイメージがありそれを払拭することは難しいと思うのですが

それでもその一助になれば幸いです。

ではまた。

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