心神喪失が決まってからどうなるの?〜医療観察法について知ろう

こんにちは、たつみです。

これまでの記事では、「心神喪失とは何か」、そしてそれを判断するために行われる「精神鑑定」についてお話ししてきました。
今回はその続きとして、心神喪失と判断されたあと、実際にはどのような流れになるのかをお話していきたいと思っています。

無罪が確定したのに、これ以上何をすることがあるの?

たつみ

そう思われるのは自然ですが、大前提として
心神喪失、不起訴になった方というのは『精神症状がある方』です。
ましてや犯罪を犯すほどの精神症状がある方をそのままにしておくわけには行きません。

精神症状のために犯罪を犯した方に対してどのように対応していくのか、

そのためにあるのが、医療観察法であり、その最初の手続きが当初審判です。

まずは医療観察法についてお話しましょう。

目次

医療観察法とは何のための法律か

医療観察法は、正式には
心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った人に対する医療及び観察に関する法律
という名前の法律です。

少し難しく聞こえますが、趣旨を一言で言うと、

刑罰ではなく、医療と支援によって、再び同じことが起きないようにするための法律

です。

刑事責任を問えない以上、刑罰で対応することはできません。
一方で、「何もせずに終わりでよいのか」という社会的な不安があるのも事実です。

その間をつなぐために作られたのが、医療観察法です。

医療観察法は2005年に施行された法律で意外と新しいものです。

この法律が出来るまでは、精神保健福祉法といういわゆる精神科の患者さん全体に対しての法律で対応するしかなく、対応に限度があったため作られた形になります。

実際この法律が出来るまでは措置入院という入院形態での入院しか出来なかったのでかなり苦労されたようです。
(措置入院については以前の記事でご説明していますので良ければそちらの記事も御覧ください)

精神科患者一緒くたの法律で対応するのではなく、司法の方には司法の方用の法律で対応しようという感じですね。

なんとなく医療観察法についてはイメージが掴めましたでしょうか。
続いて医療観察法が適応されるうえで大切な前提をおさえていきましょう。

医療観察法による医療が行われるための3つの条件

医療観察法による医療は、
心神喪失だったから自動的に受けるもの」ではありません。

法律上は、次の3つの条件をすべて満たしている場合に限って
医療観察法にもとづく医療が行われます。

① 行為時と同様の精神障害が現在もあること(疾病性)

犯罪行為を行ったときに、
心神喪失や心神耗弱の原因となった精神障害と、
同じ種類の精神障害が今もあることが必要です。

過去に精神障害があった、というだけでは足りません。
「今どういう状態か」が重視されます。

② 医療によって改善や安定が見込めること(治療反応性)

この治療反応性という言葉は、僕自身よくわかんないな〜と思っていました。
というのも

たつみ

治療反応性っていうけど、統合失調症や双極性障害はともかく
知的障害とか認知症の人はどうなるんだろう。
治せる病気じゃないと思うんだけど…

と思ったからです。

ただ、ここでいう「治療可能性」とは、完全に治る、元に戻る、という意味ではありません

治療によって、

  • 症状が落ち着く
  • 再発や再燃を防げる
  • 行動化のリスクを下げられる

といったことが見込めるかどうか、という意味です。
これであれば、知的障害や認知症の病気そのものを治すことはできませんが、
医療の介入で行動化のリスクは減らせることがあるので、

知的障害や認知症の方も対象になることはあると思います。

③ 医療を行わなければ再び同様の行為を行う可能性があること(社会復帰阻害要因)

単なる不安や印象ではなく、
具体的・現実的な再発リスクがあるかどうかが検討されます。

この3つすべてを満たすと判断された場合にのみ、
医療観察法による医療が行われます。

さて、医療観察法の話が長くなってしまいましたが、
ここから不起訴・心神喪失が決定した後の流れをみていきましょう。

不起訴・心神喪失のあとに行われる「当初審判」

心神喪失と判断され、不起訴や無罪が確定したあと、
すぐに入院や通院が決まるわけではありません。

まず、裁判所で当初審判という手続きが行われます。

当初審判は、罰を決める裁判ではありません
医療観察法という枠組みで、医療や支援を行う必要があるかどうかを判断するための場です。

そもそも大前提として

不起訴・心神喪失が決定した段階で無罪なのは確定しています

当初審判は様々な立場の人で話し合って行われます。

  • 裁判官
  • 精神科医(鑑定医)
  • 精神保健福祉の専門職
  • 検察官
  • 本人
  • 付添人(必ずつく弁護士)

精神科医による意見や、生活環境の調査などを踏まえて、
この人にとって、どの対応が現実的で安全なのかを医療と法律の視点から判断する
これが当初審判です。

そして、その結果は「入院処遇」「通院処遇」「不処遇」3つのいずれかに割り振られます。

入院処遇とは

入院処遇は、医療観察法にもとづいて、指定された医療機関に入院して治療を行う形です。

これは刑罰ではありません。
目的は、病状を安定させ、再び同じような事態が起きないようにすることです。

薬物療法だけでなく、生活の整え方や、退院後を見据えた支援の調整なども含まれます。
入院期間は個別に判断されますが、目安としては1年半(18ヶ月)前後とされることが多いです。

この入院期間は

急性期:病状の安定、信頼関係構築、治療の動機づけを行うための3ヶ月
回復期:心理社会的治療、外出訓練、退院後の通院先を決定するための9ヶ月
社会復帰期:地域支援体制を整えるための6ヶ月

という風に考えられています。

通常の精神科入院は基本的に3ヶ月以内に退院であることを考えると、
医療観察法の入院はかなり長期的に設定されていることがわかります。
それだけ慎重なのです。

ちなみに、通常の入院では退院は主治医と患者さんで話し合って決めますが、
医療観察法の場合、退院は医療機関だけで決めることはできません

退院にあたっては、裁判所の許可が必要です

通院処遇とは

医療観察法には、外来での通院処遇も含まれています。

通院処遇では、決められた医療機関への受診が義務づけられます
義務である以上

もう調子もいいし、行ーかない

みたいな外来の自己中断は出来ません。

また、社会復帰調整官が関わり、

  • きちんと通院できているか
  • 病状は安定しているか
  • 生活上の問題はないか

といった点を確認・調整します。

この通院処遇をやめる場合も、
裁判所の判断が必要になります。

不処遇とは

当初審判の結果として、不処遇と判断されることもあります。

不処遇とは、
医療観察法としては「何もしない」という判断です。

裁判所の関与も、通院義務も、観察もありません。
医療観察法という特別な枠組みからは完全に離れます。

その後は、

本人の意思で医療を受けるかどうかを決める、
いわば普通の市民と同じ立場

になります。

不処遇になるケースはほとんどないようですが、それでもゼロではありません。
これに関しては、「犯罪犯す精神状態なのに不処遇ってどうなんだろう」と
僕も正直不思議なところです。

医療観察処遇の人と一緒になることはあるの?

自分が精神科に入院、通院しているときに、この人たちといっしょになる可能性があるの?正直怖いんだけど。

このような疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないかと思います。
ここは当然の疑問だと思いますし、

「そのようなことを考えるなんて‼️」というような綺麗事を言うつもりはありません。

ただご安心頂きたいのですが、

皆さんが医療観察法の処遇になっている方と一緒になる可能性はほとんどありません。

まず医療観察法の入院にしても通院にしても、どの病院、クリニックでも出来るわけではないんです。
国や自治体が関与する「指定医療機関」でしか出来ません。

入院処遇の場合

入院の場合は「医療観察法専用の病棟」でしか入院できないので、
一般精神科病棟の患者さんとは別の病棟の入院になります。

この病棟も当然出入り口に鍵がかかるようになっていますので、患者さんが自由に出入りすることも出来ません。
通常の精神科の患者さんが入院する病棟とは完全に別れているので一緒になることはまずありません。

通院処遇の場合

通院にしても同様に「指定医療機関」である公的病院(公的病院の中でも更に一部)でしか出来ないので、
民間のクリニックに受診されることはありません。

このように入院処遇にせよ、通院処遇にせよ、皆さんが一緒になる可能性は殆どないのではないかと思います。

まとめ

医療観察法は、
「無罪にしたまま放置する制度」でも、
「一生管理し続ける制度」でもありません。

心神喪失になった方の再犯防止と社会復帰を支援する

そのための仕組みです。

とはいえ、犯した出来事がなくなるわけではありません
そこが、この司法の問題の難しいところではないかなと思います。

法律の問題と感情の問題、明確に区別することはできません。

皆さんはどのように思われますか?

よろしければコメントください。
ではまた。

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