
こんにちは、たつみです。
大分時間が空いてしまいましたが、また更新を再開していきますのでよろしければまたお付き合いください。
今回は、退院した後の過ごし方についてお話ししていきます。
外来でもよく相談される内容ですし、患者さんが入院する一番の目的は良くなって自宅で過ごせるようになることですよね。
医師である自分の手が及ばない部分も多くあるのですが、お伝えできればと思います。
退院後の大きな目標は「再入院を防ぐこと」
退院後の患者さんにも色々な目標、ゴール、課題のようなものがあるように、
我々医療者にも目標があります。
それは、「再入院することなく自宅で生活を送れるようにすること」です。
そのために、入院中から訪問看護や生活面の支援を整えて退院に備えています。
ただ、これらは「このような支援があれば多分大丈夫だろう」という、
入院中に予想して調整したものなので、やってみないとわからないのです。
外来では退院後の様子を確認し、患者さんの困りごとを聞きながら、
必要に応じて支援を調整していきます。
退院後の外来はどれくらいの頻度で受診すればいい?

退院した後、どれくらいの間隔で通えばいいですか?
これはよくある質問です。
患者さんの病状や、主治医によって違いはありますが、
僕の場合は退院直後は2週間以内に一度外来に来ていただくことが多いです。
慣れ親しんだ自宅に退院であったとしても、意外と退院してすぐは慣れないものです。
病院では困ったときは主治医や看護師が助けてくれますが、
自宅では食事の準備から不安な時の頓服の使用など、1人で対応しないといけない場面が増えますよね。
ご家族がいればまだ楽ですが、一人暮らしの場合は結構大変です。
そのため、退院後の最初の1〜2ヶ月は、
2週間おきに受診してもらいながら 調子を一緒に確認し、
必要があれば薬や支援体制を微調整しています。
自宅での過ごし方のポイント
退院直後は「普通の生活に戻れた」とホッとする一方で、
思っている以上に疲れやすかったり、調子を崩しやすい時期でもあります。
いくつかのポイントを意識してもらえると、落ち着いた生活につながりやすくなります。
① 生活リズムは「起きる時間」だけまず決める
退院後すぐは、完璧な生活リズムを整える必要はありません。
まずは 毎朝の起きる時間だけ固定する ことが大切です。
夜の睡眠は調子が悪いとどうしても乱れますが、
「朝決まった時間に起きる」だけで自然と整ってくることがよくあります。
② 食事はできる範囲で、抜かないように
自炊が難しければコンビニでも良いので、
朝・昼・夕の3回の食事のリズムをつくるだけで体調は安定しやすくなります。
それにお薬の内服もちゃんと習慣づけ出来れば完璧です。
③ ちょっと外の空気を吸う
散歩や近くのスーパーへ出るなど、
短い時間でも外に出る習慣があると気分が安定しやすいです。
無理に長い散歩をする必要はありません。
特にそわそわや不安が強い場合は散歩をしましょう。
都会に住んでいると難しいかもしれませんが、
統合失調症の方の場合は、騒がしくない静かなところを散歩するのがオススメです。
(防犯には気をつけてくださいね)
④ 一気に頑張らない
退院後は体力も気力も回復途中です。
掃除・買い物・料理を全部やろうとすると疲れてしまいます。
「今日は洗濯だけ」「今日は料理はお休み」など、
少しずつ生活を取り戻していきましょう。
⑤ 一人で抱え込まない
不安や心配なことが出てきたら、
外来や訪問看護で気軽に相談してください。
退院後の数週間は、調子が揺れやすいのは自然なことです。
再発を防ぐためにいちばん大事なこと
とても大事なことなのですが、
統合失調症が悪化する一番多い原因は「薬を飲まないこと」です。
外来でも、



もう薬は必要ない気がするので飲んでいません
と言われることがあります。
しかし、調子が安定しきっていない時期に自己判断で中断してしまうと、
数週間のうちに症状が再び強く出てしまい、
結果として入院が必要になるケースが本当に多いのです。
一度症状がぶり返すと、薬を調整し直すために 1〜2ヶ月ほど かかることもあります。
その分、復職や復学にもまた時間がかかってしまいます。
「自分の判断で薬をやめない」
これだけはぜひ、守っていただきたいなと思っています。
安定した状態が維持できてくれば、薬をゼロにするのは難しくても
量を減らせることはままあります。
時間はかかってしまいますが、出来ればその時を焦らず待っていただければと思います。
病気のことを職場や周囲に伝えないといけないの?
これは外来でもよく相談されることですが、
結論からお伝えすると 本人が望まなければ病名を伝える必要はありません。
職場で配慮を受けるために診断書を提出する場合は、
ある程度病名に触れざるを得ない場面もありますが、
そうでないのであれば 基本的に病名を伝える義務はありません。
(復職する場合には、これまでの経過から“推測される”ことはあるかもしれません。)
そして、本人の同意なく病院から職場に病名が伝わることは絶対にありません。
これは法律で守られている部分です。
また、元の職場を辞めて別の職場に就く場合も、
病名をお伝えする必要はありません。
無理に言う必要はない
ここでひとつ勘違いしてほしくないのは、



精神疾患は持つということは、大変なものなのか
隠すべきものなのか
ということを言いたいわけではありません。
もちろん、社会の精神疾患への理解が十分とは言えない現実はあります。
ただ、僕が本当に伝えたいのは、
言いたくないこと、言うことで得られるものがないことは無理に言わなくていい
ということなんです。
精神科医として多くの患者さんを診てきた自分からすると、
精神科の病気を周囲に伝えないということは、
僕が自分の体重をわざわざ周囲に言わないのと同じような感覚です。
ブログだから書きますが、僕は体重が100kgくらいあった時期がありました。
見た目でバレているとはいえ、職場ではあえて話しませんでした。



「体重100kg越えました」なんて、医者として恥ずかしいし、
言ったところで痩せるわけでも、有給が増えるわけでも無いしな。
今も別に自分から体重を周りに言うことは有りません。
精神科の患者さんの苦しみを軽視しているわけではありません。
あくまで自分が言いたいことは
言うことで特に得られるものがないなら、言う必要はない
ということです。
逆に、得られるもの、
たとえば周囲の配慮や理解が増える、安心できる環境ができるなど、
そうしたものが得られるなら伝えることにも意味があります。
必要なのは、
自分にとって必要かどうかの視点で選んでよい、ということです。
おわりに
統合失調症の退院後は、環境の変化が大きく、どう過ごせばいいのか不安になる時期です。
ですが、外来で相談しながら少しずつ生活を整えていけば大丈夫です。
今回記事で書いた内容は、全精神科医が同じようにしているというわけではなくて
一部、僕のやり方というか僕が患者さんに伝えているやり方もあります。
悩んだときは主治医の先生に是非相談して、もし僕と意見が違った場合は
主治医の先生の意見を信じてください。
普段の様子を知っている主治医の先生の方がより良いアドバイスが出来ると思います。
ではまた。







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