
こんにちは、たつみです。
前回は統合失調症について、全体的なお話をしました。
今回は少し掘り下げて、「統合失調症はどんな人がなりやすいのか?」についてお話ししていきたいと思います。
前の記事でもお話ししましたが、統合失調症の生涯での発症率はおよそ 100人に1人(約1%) と言われています。
小学校の一学年に1人か2人くらいが発症するイメージです。
今回の記事ではさらにどのような人がなりやすいかについてお伝えしていきます。
統合失調症になりやすい年齢と男女差
統合失調症において年齢は結構大事です。
統合失調症は、10代半ばから30歳ごろまでに発症する人が多いとされています。
ただし、男性と女性とで発症しやすい年齢に少し違いがあります。
- 男性:10代後半から20代前半にかけて発症が多い
- 女性:20代後半から30代に多く、40〜45歳にもう一つ小さな発症のピークがある
なぜ男女で違いが出るのかは明らかではありません。
一説には、脳内でのホルモンや遺伝子の働きが男女で異なるためではないかと考えられています。
勿論、これらの年齢以外では発症しないということではありません。
10代で発症する女性の方もいれば、40代の男性で発症される方もいます。
統合失調症は遺伝する?双子研究でわかったこと
これもよく聞かれる質問です。
「統合失調症は遺伝するのか?」
「親が統合失調症なら子どもも統合失調症になるんじゃないのか?」
という質問ですね。SNS上でもよく言われます。
事実として、統合失調症には遺伝的な影響があることはわかっています。
しかし「統合失調症=遺伝の病気」ではありません。
その証拠としてよく挙げられるのが双子を対象にした研究です。
少し話がずれますが、双子には一卵性双生児と二卵性双生児があります。
この2つの違いは、ざっくりですが
一卵性双生児:双子の遺伝子は同じ
二卵性双生児→双子の遺伝子は異なる。
と思っていただけたらと思います。
この研究は統合失調症を双子の片一方が発症した時、
もう一方が統合失調症を発症するかどうかを調べたものになります。
もし仮に統合失調症が遺伝だけで決まるのであれば、一卵性双生児の一致率は100%になるはずです。
研究の結果:
- 一卵性双生児の一致率:41~65%
- 二卵性双生児の一致率:0~28%
この結果から
統合失調症には遺伝的な影響があるが、それがすべてではない
ということが明らかになったのです。
統合失調症には心理的・社会的な状況も大事
遺伝子に加えて、統合失調症の発症に大きく関わるのが環境や社会的な要因です。
統合失調症の患者さんで

普段と特に何も変わりない生活だったんですけど、
ある日突然声が聞こえるようになりました
なんておっしゃる方はほとんどいません。
多くの場合、何かしら強いストレスが背景にあります。
- 職場や学校での人間関係(いじめやパワハラなど)
- 孤独や孤立した生活
- 睡眠不足や過労
こうした負担が重なった時に、症状が表れてくることが多いのです。
ですので、最近の統合失調症の治療、予防に関しては
「より安心感を得られる環境を早期に整えよう」という流れが大きいです。
性格や発達特性との関係は?
性格について
性格も関係しますね。
たとえば、内向的でストレスをためやすい方や、感受性が強く周囲の影響を受けやすい方は発症のリスクがやや高まることがあります。
ただ、これは明るい人がなりにくいというわけではありません。
明るく見える人でも、長期間強いストレスにさらされると発症することがあります。
そもそも表面上は明るく振る舞っているからといって、ストレスの耐性があるとは限りません。
見た目の明るさだけでは意外とわからないものです。
発達特性について
発達障害との関連についても研究が進んでいます。
ASD(自閉スペクトラム症)の方は、そうでない方に比べて統合失調症を発症するリスクが高いと報告されています。
ただし「ASD=統合失調症になる」というわけではありません。
おわりに
今回は「統合失調症はどんな人がなりやすいのか?」というテーマで、年齢・遺伝・環境要因・性格や発達特性についてお話ししました。
きっと多くの方が気にされるのは「遺伝」の部分だと思います。
遺伝的な影響は確かにありますが、それだけでは決まらない病気です。
自分としては、遺伝を恐れて子どもを産まない社会になるよりも、
そのようなことを気にせずたくさん子供が産まれて、その方達が統合失調症にならないように、あるいは重症化しないように精神科医として拾い上げて、健やかに過ごせるお手伝いができれば良いかなと思っています。
子どもが生まれない国に未来はありませんからね。
では、また。
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