統合失調症の入院の流れ〜安心して回復していくために

こんにちは、たつみです。

今回は、統合失調症の入院治療の流れについてお話しします。
もちろん、すべての方が同じ経過をたどるわけではありません。
ですが「だいたいどんなことが行われるのか」を知っておくと、少し安心できると思います。

今回は『統合失調症で錯乱し、措置通報を受けて警察が病院に連れてきた』というケースの入院の流れについてご説明しようと思います。

ちなみにこれは措置入院という入院方法で、詳しくは以前の記事「知ってほしい精神科の入院の種類〜精神科は強制入院させるんでしょ?〜」で書いていますので、よろしければそちらの記事もご確認ください。

目次

病院到着〜入院まで

警察の方と保健所の職員が病院に到着してから入院まで、ここが大きな山場です。

警察が病院に連れてきてくれるんだし楽ちんじゃないの?

と、侮るべからず。

措置通報の方は基本的に「他者を傷つける可能性がある精神状態の人」ということなので、
当然僕らも傷つく可能性があります。

イメージが浮かべにくいと思いますので、簡単に例を出すと

◯普通の入院の場合

たつみ

治療が必要ですね。入院です。

わかりました。よろしくお願いします。

みたいな感じですが

◯興奮している統合失調症の方の場合

何だお前らは‼️ 何の権利があってこんなことしてるんだ‼️
はなせぇぇぇぇ‼️

たつみ

病棟看護師さん、複数人で対応してください
かなり興奮しているので殴られたりしないように。

とまあ、だいぶ違います。僕ら精神科医は慣れていますが、初めてみた人は結構ぎょっとすると思います。

ただまあ、患者さんがこのような反応するのも当然です。

本人にとっては世界が敵に見えており、「助けようとしている人」が「襲ってくる人」に見えてしまいます。
そのうえ、「自分は正しいことをしている」と思っているので、「なぜ警察や病院に止められるんだ‼️」という驚きや怒りがあるのです。

医者は何しとる?

看護師さんに対応任せて医者は何もしないの?

と思われるかもしれませんが、一応医者も医者でやることはあるんですよ。

警察や保健所の方やご家族からの情報の聞き取りや、入院の諸々の手続きとかですね。

ただあまりに患者さんの興奮が激しかったり、女性スタッフしかいない場合は
男性である自分もその場を手伝うことは全然あります。

入院直後の対応

病室に到着すると、まずは全身状態の確認から始まります。
発熱や脱水、アルコールなどの影響がないかも含め、身体的な検査も行います。
(ただ、採血などは難しいことが多く、後日になることが多いです。)

それ以外にも、大事な確認が「危険物がないか」です。

危険物は、いわゆる刃物だけでなく、ズボンのゴム紐も含まれます
ゴム紐を外すと首を絞めるために使えてしまうためです。

その後、精神状態に応じて病室が決まります。
精神科の病室には、次の3種類があります。

  • 多床室(大部屋):数名で過ごす一般的な部屋
  • 個室:静かに過ごせるプライベート空間
  • 保護室(隔離室):精神科特有の特別な部屋、外から鍵がかかり、室内はトイレ以外ものがない空間。

精神状態に応じてとは書きましたが、措置入院の方はほぼ100%保護室に入院します
この保護室という場所について簡単にご説明しますね。

保護室とは?

「隔離」「拘束」という言葉を聞くと、怖い印象を持つ方も多いと思います。
ここらへんの話はまたいつか改めて書くつもりなので、今回はさらっとだけ説明いたします。

これはイラストですが、実際のものが知りたい方は「精神科 保護室」とかで調べて頂ければ実物が見られます。

保護室には、布団(orベッド)とトイレ以外はほとんど何もありません
さらに重要なポイントとして外から鍵がかかる構造になっています

つまり、中にいる患者さんが自分の意志で外に出ることは出来ません

非人道的だと思われるかもしれませんが、この“外から鍵がかかる”という構造がとても重要です。

保護室の目的は大きく分けて2つです。

  1. 安全の確保:他の患者さんやスタッフへの暴力行為や罵倒を防ぐ。
  2. 刺激の制限:静かな環境で、混乱した思考を落ち着かせる

安全の確保が一番大事な理由ですね。統合失調症の妄想から他の患者さんに対して危害を及ぼすことがあります。
これだけは絶対に阻止しないといけません。そのために外との出入りを制限する必要があるのです。

続いて刺激の制限ですが、
前の記事「統合失調症の仕組みをやさしく解説〜心のバリアで理解する〜」にあるように、
外からの刺激(光、音、人の会話など)が頭の中で膨れ上がり、さらに妄想や幻聴を強めてしまうので
静かな場所というのはそれだけで治療的に働きます。

それに鍵がかかる保護室にいる間、部屋に入ってくるのは医者か看護師くらいですので、
自分を襲う危険な存在がない安全な場所」を提供することが出来るのです。

このように保護室は安全面でも治療面でも重要な役割を果たします。

ちなみに、

入院中ずっと閉じ込められるの?

と思われるかもしれませんが、そんな事はありません
興奮が落ち着いた段階で、すぐに保護室から一般病室へ移ってもらいます。

お薬を飲んでもらうのは、けっこうたいへん

入院後の最初の課題は、薬を飲んでもらうことです。
しかしこれは決して簡単なことではありません。

お薬をすすめても、

なぜ薬なんか飲まないといけないんだ‼️
毒を盛ろうとしてるのか‼️


と怒鳴られることもありますし

薬は絶対に飲みません。
私はおかしくないので、なんで飲まないといけないのかわかりません。

と静かに否定されることもあります。

統合失調症の治療は薬が基本なので、何とか薬を飲んでもらうように頑張ります。
大変なときは1時間くらい説得することや、時間をあけて説得することもありますね。

最初の数日間は、拒否や怒りが強く出ることもありますが、何日か薬を飲み続けることができれば
徐々に落ち着いてきます。

ですが、

たつみ

〇〇さん、やっとお薬毎日飲んでくれるようになったな〜

と油断していると、

先生、〇〇さんが薬を飲まないって仰ってます‼️
病棟に来てください。

ということはあるあるなので、退院まで油断は出来ません。

回復への道のり

薬の効果が出るまでには、だいたい2〜3週間ほどかかります。
急に症状が消えるわけではなく、少しずつ「幻聴が遠くなる」「眠れるようになる」「食事がとれる」などの変化が現れます。
この段階になると、治療に「医師との会話(精神療法)」が加わってきます。

お話する内容としては、

  • 入院の時の状況や心情
  • 薬を飲んでどのような変化があったか
  • これから退院を見据えてどのような方針を立てるか

みたいなことをお話します。

簡単に言うと「振り返り」「現状把握」「今後の方向性を考える」ということですね。

退院に向けて

症状が落ち着いてくると、退院の準備を始めます。

もし順調に治療が進んでいれば、だいたい入院後1ヶ月半〜2ヶ月くらいには退院に向けた調整になっていくかなと思います。

これは退院前の本人の状況と回復状況にもよってきます。

  • 自宅かグループホームなどの生活の場をどうするか
  • 訪問看護デイケアなどの支援を使うか
  • 家族との関わり方をどうするか

統合失調症は基本的に明確なストレス因(人間関係や環境の負荷)があることが殆どなので、その部分に対してどのように対応していくか、誰か近くに支えてくれる人がいるのか等を確認して、必要なサービスを考えていきます。

この話し合いは本人と医師だけでなく、家族や看護師、福祉の専門職であるソーシャルワーカーも交えて行うことが多いです。

たつみ

これなら、退院後も良い状態を維持できそうだし、
悪くなってもすぐに対応できそうだな。

というような計画を立てて退院です。

おわりに

今回は入院後の流れをさらっとご説明しました。

保護室という部屋のことも書きましたので、「やっぱり精神科の病院って怖い」と感じられる方もいらっしゃるのではないかなと思います。

その点に関して、「でも精神科の病院は本当は温かい場所なんですよ」というつもりはありません。

ただ、「治療上、必要なことをしている」という点を、少しでもご理解いただけたら幸いです。

とはいえ、納得いかない点もあると思いますので、ご意見やご感想がありましたらコメントいただけたら幸いです。

ではまた。

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