統合失調症の仕組みをやさしく解説〜心のバリアで理解する〜

こんにちは、たつみです。

これまでの記事では、統合失調症の前兆や、急性期の激しい状態についてお伝えしてきました。
幻聴や妄想の具体的なイメージが少しでもつかめていたらうれしいです。

本来は、次に「入院治療の流れ」についてお話ししようと思っていたのですが、
先に統合失調症という病気の仕組みについて、できるだけわかりやすくお話しします。

この記事を通して「そもそもなぜ入院が望ましいのか」「なぜ薬が必要なのか」について理解を深めることで次回の“入院治療”の話がよりわかりやすくなると思います。

目次

統合失調症の明確な原因は、まだわかっていない

ちょっと肩透かしのようで申し訳ないのですが……
実は、統合失調症のはっきりとした「原因」はまだわかっていません
というよりも、精神疾患の中で“原因が完全にわかっている”病気は、実はほとんどないのです。
(強いていえば、認知症など一部の疾患くらいでしょうか。)

ただし、「この物質が深く関わっていそうだ」ということは、かなり明らかになっています。
それが「ドーパミン」です。

この現代社会、「ドーパミン」の名前はよく聞きますよね。
そう、そのドーパミンです。

統合失調症では、このドーパミンが脳内で過剰に働いてしまい
その結果として幻聴や妄想などの症状が生まれると考えられています。

これが、いわゆる「ドーパミン仮説」です。

ドーパミンだけが悪さしているの?

たつみ

最近の流れとしては、
「ドーパミンは統合失調症に大きく関わっているけども、
ドーパミン以外の物質(神経伝達物質)も関わっていそうだね。」
みたいな考え方が主流です。

この考え方は新しい治療薬の開発にも関わっていて、
昔の薬はドーパミンに作用することのみを目的としていましたが、
最近の薬は、複数の神経伝達物質に働きかけるようにより複合的に効く薬へと進化してきています

イメージでとらえる統合失調症

とはいえ、「ドーパミンが過剰に働く」と言われても、心の中で何が起きているのかはイメージしにくいですよね。
実際、患者さんのご家族にご説明しても、「うーん、そういうものなんですね……」とピンとこないことが多いです。

そこで私は、もう少し心の動きに沿った説明をするようにしています。
そのときのキーワードが、「自我境界」という考え方です。

自我境界とは?

自我境界とは、簡単に言えば「自分」と「自分以外」を区別するための心のバリアのようなものです。

僕たちは普段、周囲の音・光・視線・ストレスなど、さまざまな刺激に囲まれています
よほどのことがなければそれを気にせず、落ち着いて過ごせますよね。

それは、この“心のバリア”がうまく機能しているからです。
このバリアが、外の刺激から心を守ってくれています。

このバリアが働いていること自我境界が明瞭と言い、
このバリアが働かないこと自我境界が不明瞭と言います。

統合失調症になると、バリアが壊れる

ところが、統合失調症になると、このバリアがボロボロになってしまいます。
すると、普段なら気にならない小さな音や人の視線、ささいなストレスが、
直接、心に突き刺さるように感じられるようになります。

本来なら無視できるような音や出来事が、心の奥まで侵入してしまうのです。
これが、幻聴や被害妄想の背景にあると考えられています。

統合失調症の治療の目的は「自我境界の回復」

統合失調症の治療では、壊れてしまった心のバリア(自我境界)を修復することが目標になります。

そのために必要なのが、

  • 薬によって脳内のドーパミンの働きを整えること
  • 静かで安心できる環境を確保すること

この2つです。

薬でバリアを補強し、環境で刺激を減らす。
この組み合わせが、心の回復には欠かせません。

統合失調症には薬が不可欠

プロであるならば、薬を使わずに“言葉”で治してほしいです。

と言われることがあります。

誤解を恐れず言うのであれば、

「極力少ない薬で治療をすることは可能ですが、薬を全く使わないで治療することは不可能
と自分は思っています。

もし仮にそれが出来るのであれば「そもそも統合失調症ではない」とすら思います。
一旦薬を使って治療して、良くなってからお薬をやめるならまだありえますけどね。

なぜ薬が必要なのか

なぜなら、「僕ら精神科医の言葉」そのものが刺激だからです。

僕たちが患者さんに話しかける声、筆談で書く文字、視線や身ぶり──
そのすべてが、患者さんの心にとっては“外からの刺激”になります。

つまり、バリアが弱っている状態では、
僕たちの言葉さえも心にダメージを与えてしまうことがあるのです。

だからこそ、まずは薬でバリアを補強し、刺激を最小限にすることが何より大切になります。
言葉という刺激を耐えられる状態になってから言葉を用いた治療が活きてきます。

おわりに

今回は、統合失調症の「病気の仕組み」についてお話ししました。
ドーパミンの乱れという生物学的な側面と、心のバリア(自我境界)のイメージの両方から考えると、
統合失調症は「こころが繊細になりすぎている状態」とも言えます。

薬は“抑えつけるため”ではなく、過剰な刺激から心を守り、回復のための余裕を取り戻すための手段です。
そして、入院は「閉じ込める場所」ではなく、「心を守る安全な場所」です。

とはいえ、

精神科医の詭弁じゃないの?

と思われる方もいらっしゃるかなと思います。

次の記事ではそこのあたりを詳しく扱う予定です。よろしければ次回の記事も是非御覧ください。

ではまた。

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