
こんにちは、たつみです。
今回からまた精神科の病気についての記事を書こうと思います。
今回から取り扱うテーマは「統合失調症」です。
統合失調症は、精神科の歴史の中で非常に重要な位置を占める病気です。
精神医療そのものが、この病気の治療から始まってきたと言っても過言ではありません。
精神科の外来にいらっしゃる方は、うつ病や認知症の患者さんの方が圧倒的に多いのですが、
それでも精神科医が常に気にしている病気のひとつが、この統合失調症です。
また、一般の方に誤解を受けやすい病気もまた統合失調症です。
「なったらもう人生が終わり」「頭がおかしいから統合失調症になる」
その思っている方も残念ながらいらっしゃいます。
ブログを通して皆さんに統合失調症のことを知ってもらい、知ってもらえたら幸いです。
統合失調症になる人はどれくらいいる?
統合失調症になる割合
統合失調症になる方の割合はどれくらいなのか、まずはそこからおさえておきましょう。
統合失調症は大体100人に1人くらいが発症すると言われています。
大体小学校の一学年のうち1人か2人くらいが発症すると思っていただいたらイメージがつきやすいでしょうか。
これは精神科の病気としてはそこまで高い割合ではありません。
「はじめに」のところでもお伝えしましたが、精神科の外来では、うつ病や認知症の方が圧倒的に多いのです。
それは数字としても明らかで、
うつ病は大体15人に1人、認知症は65歳以上であれば7人に1人が発症すると言われています。
数字としても明らかですよね。
統合失調症の原因は?〜遺伝が全てじゃ有りません
統合失調症がなぜなるのか、それは未だ明らかにはなっていません。
遺伝の要素はあると言われています。
しかし「両親が統合失調症だから、子供も統合失調症になる」という単純なものではありません。
太りやすい体質、痩せやすい体質のように、統合失調症に比較的なりやすい体質、なりにくい体質という風な影響があるという程度に考えてください。
太りやすい体質だからといって、皆さんが太っているわけではありませんよね。
統合失調症も同じようなものだと思ってください。
統合失調症になるかどうかは
「個人の体質」×「個人の性格・発達特性」×「心理的要因(ストレスや孤独)」
これらの組み合わさった結果と言われています。
統合失調症になりやすい体質であっても、根が明るく、大きなストレス・パワハラ等もなければ発症することなく過ごした方もいるはずです。
統合失調症の症状(陽性症状・陰性症状)
統合失調症の症状を知っていきましょう。

統合失調症の症状といったら、変なことを言うんだよね?
妄想でしょ?



妄想は確かに統合失調症の有名な症状です。
ですが、当然それだけではありません。
統合失調症には2つの症状に分けられます。
それが「陽性症状」「陰性症状」です。
陽性症状・・・本来ないはずの体験や考えが「加わる」症状
陰性症状・・・本来あるはずの気持ちや行動が「失われる」症状
では具体的な症状について見ていきましょう。
陽性症状


- 幻覚:特に幻聴(誰かに悪口を言われている、命令される声が聞こえるなど)
- 妄想:「監視されている」「嫌がらせされている」など根拠のない確信
- 思考のまとまりの低下:会話がとびとびになったり、話が筋道を立てられない
- 行動の混乱:落ち着きがなくなる、奇妙な行動をとる
この妄想、幻聴の内容も特徴があり、
「攻撃されている」「馬鹿にされている」と被害的な発言・内容が多いので
被害妄想と呼ばれています。
陰性症状


- 意欲の低下:やる気が出ない、身の回りのことをしなくなる
- 感情表現の乏しさ:喜怒哀楽が表情や声に出にくくなる
- 会話の貧困化:話す言葉が少なくなり、会話が続かない
- 社会的な引きこもり:人付き合いを避け、家に閉じこもりがちになる
これだけみると「うつ病みたい」と思われるかもしれませんが、うつ病とは全く違います。
うつ病の方の場合は「意欲が湧かない、頭が働かない自分に対しての苦しみ」がありますが、
統合失調症の方の場合はそのような葛藤はあまり見られません。
統合失調症の治療方法〜お薬が大事です
統合失調症の治療も、精神科治療の原則と同じで、薬物療法・環境調整・心理療法の三本柱です。
ただし、統合失調症においては特に薬物療法の重要性が突出していると考えています。
うつ病や認知症の場合は本人の困り感や要望をもとにお薬の使用を延期することはありますが、
統合失調症の治療は「まずお薬」です。
統合失調症をお薬を使わずに治療することはまずありません。
少なくとも自分は絶対にしません。
統合失調症の治療の遅れは、患者さんの今後の人生に大きく影響します。
詳しくはまた別の記事で述べさせていただきますが、これだけは覚えていてほしいと思います。
統合失調症の治療は、お薬が最も大事!
統合失調症になったらもう治らないの?もう終わりなのか?
統合失調症は治るのか?
「統合失調症は治るのか?」
これはとても難しい問題です。
「完全に治って薬が不要になる」というよりも、
「薬を使って症状を落ち着かせる。その落ち着いた状態から極力悪化させずに生活を維持する」という
方向で治療をすることが多いかなと思います。
統合失調症になったら、もう終わりなのか?
統合失調症は確かに重い病気です。
病名を伝えられたとき、本人、ご家族共に大きなショックを受けることも少なくありません。
ですが、治療薬は以前に比べて格段に良くなりました。
もちろん、薬の効果が十分に得られないタイプの統合失調症もあります。
それでも多くの方は、早めに治療に入ることで症状を落ち着かせることが可能です。
個人的には早めに統合失調症の治療介入ができれば、きっと多くの方は入院することなく
外来で治療ができるのではないかと思っています。
実際に自分の患者さんでも、社会人として日常生活を送りながら、定期の薬だけもらいに来る
という方も多くいらっしゃいます。
早めの治療さえできれば、決して未来は暗くないと自分は思っています。
おわりに
今回は統合失調症のざっくりとした部分を解説しました。
今後は統合失調症の症状や治療についてより詳しく解説していきます。
よろしければご覧ください。
これについて聞きたい、これを解説してほしい等ご要望がありましたら、
Xの質問箱かブログのコメント欄からぜひご質問ください。
ではまた。
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