
こんにちは、たつみです。
前回は「統合失調症はどんな人がなりやすいか」についてお話ししましたが、
今回は症状について詳しく解説していきます。
統合失調症というと、「幻聴」「妄想」など派手な症状のイメージが強いかもしれません。
それは間違いではないのですが、それだけではありません。
また、外から見て「落ち着いている」ように見えても、
内側では強い不安や孤独感、意欲の低下などが進んでいることもあります。
この記事では、そうした統合失調症の“症状の中身”を整理して理解することを目的にしています。
「幻聴や妄想はどんなものなのか」「陰性症状とは何か」
についてお伝えしますね。
陽性症状と陰性症状を詳しく知ろう
統合失調症には大きく分けて、
①陽性症状(本来ないものが“ある”症状)
②陰性症状(本来あるはずのものが“ない”症状)
があるという話をしました。ここからはその症状を具体的に見ていきましょう。
1. 陽性症状(本来ないものが“ある”症状)
代表的なものとして、
- 幻聴:誰かに話しかけられる、悪口を言われるなどの声が聞こえる
- 妄想:監視されている、陰謀に巻き込まれていると思い込む
- 思考の混乱:話の筋が通らず、支離滅裂な発言になる
陽性症状とは、いわゆる皆さんが思い浮かべる「統合失調症の方」の症状ですね。
幻聴、妄想について

妄想ってうつ病や双極性障害のところでもなかった?



実は妄想という症状自体は、さまざまな精神疾患で起こりうるものです。
大切なのは「どんな内容の妄想か」という点です。
統合失調症では、
「周囲から悪口を言われている」「誰かに行動を操られている」「命令されている」「人から見張られている」
といった、他者からの被害を感じる内容が多く見られます。
そのため、一般的に「被害妄想」と呼ばれます。
よく何でも悪く受けとる人のことを「あの人被害妄想あるよね〜」みたいにいわれますが、
我々精神科からすると、被害妄想とは統合失調症の方の妄想の事を言います。
陽性症状の孤独
これら陽性症状は、本人にとって非常に苦しいものであり、本人の孤独を強めるものです。
自分にしか聞こえない声に罵倒され、他人には理解されない。



うるさい、これ以上何も言うな



あの人なんかブツブツ言ってて怖いね。
周りに誰もいないのに…
と幻聴に反応していると、その本人を恐れ周りは距離を起きます。



皆気をつけろ、大きな電波攻撃を受けているんだ。
国から個人の脳の情報は抜き取られている。
NASAが裏で暗躍しているんだ‼️



何言っているのこの人。
そんな事あるわけ無いのに。



なんで皆理解できないんだ。
僕だけでなんとかしないと
常に見られているような不安や、罵倒され続けるつらさ。
あるいは何か大きな陰謀に巻き込まれているのではないかという恐怖。
それを訴えても誰からも理解されないし、否定される事による孤独。
これらが陽性症状の苦しさであり、統合失調症の方の苦しさです。
陽性症状は“じわじわ進行して、ある日爆発する”
このような状態が続いても、最初のうちはなんとか我慢できる方もいます。
けれど、長期間その苦痛に耐え続けることは難しく、次第に症状が強くなっていきます。
幻聴の声はより大きく、内容はより攻撃的に。
妄想はますます確信に変わり、「自分が正しい、周りが間違っている」という思いが強くなります。
そして、精神的にも身体的にも限界を迎えたとき、「爆発」するように行動に現れることがあります。
その結果が、時折起こる統合失調症の方の事件や自殺等の結末に繋がります。
この「爆発」により本人や周りの方が傷つかないように、
それまでに適切な治療につなげることが何より重要です。
2. 陰性症状(あるはずのものが“減る”症状)
陰性症状には次のようなものがあります。
- 意欲の低下:何もしたくない、動けない
- 感情の平板化:笑ったり泣いたりといった感情表現が減る
- 対人交流の減少:人と関わることが負担に感じる
- 思考の停滞:考えるスピードが遅くなる
簡単に言えば、「部屋にこもって人と関わらずに過ごす状態」というイメージが近いでしょう。
引きこもりと何が違うの?
「それって引きこもりと同じじゃないの?」と思う方もいるかもしれません。
引きこもりの方は、外に出たくないという気持ちはありますが、
家ではゲームをしたり、趣味に没頭していることが多いですよね。
一方、統合失調症の陰性症状では、家にこもって何もせず、じっと過ごしていることが多いです。
うつ病とも違うの?
うつ病の方は「しんどいけど頑張らなきゃ」と自分を奮い立たせようとします。
そのため、引きこもるというより「無理してでも外に出る」方が多い印象です。
表情にも違いがあります。
うつ病の方は悲しげな表情で、眉が下がり、泣き出しそうな雰囲気があります。


お話すると「今まで通り外に出たりしたいんですけど、出来ないんです」と悩みを言われますね。
それに対して、統合失調症の陰性症状では無表情で淡々とした印象です(薬の影響も一部あります)。


受け答えも単調で、「家にいます」と事実を静かに伝えるだけのような感じです。
もちろんそうは言いませんが、雰囲気「家にいますけどなにか?」みたいな
その状態を本人自身が特に問題だと感じていないこともあります。
陰性症状と向き合う治療
陰性症状は家庭外では大きく問題にはなりませんが、社会復帰のためには改善が大事な症状です。
本人は気にしていなくとも、家族の負担は大きく、生活にも支障が出てきます。
そのため、安定期の治療では「陰性症状とどう付き合い、社会活動を再開できるか」が重要になります。
服薬だけでなく、リハビリテーション、心理社会的支援、就労支援などを組み合わせていくことが求められます。
まとめ
今回は、統合失調症の中核となる「陽性症状」と「陰性症状」についてお話ししました。
統合失調症の症状は、単なる「幻覚や妄想」ではなく、
本人の内側で起きている強い苦痛や、周囲から見えにくい変化が含まれています。
次回は、これらの症状がどのように現れてくるのか、
そして「前駆期」と呼ばれる初期のサインについてお伝えしていきます。
ではまた。
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